どれくらいの時間が経ったか。そんなに経っていないのに、ジェイクが楽しそうに戻って来た。風呂場の掃除がもう終わったのだろうか。

「おい!○○!見てくれよ風呂場!」

 ジェイクは至極嬉しそうにして、自分の部屋の床に散らばった物を整理している○○を立たせた。そして、○○の背中を押しながら風呂場へと連れて行く。

「ほら!見てみろ!」

 ジェイクは風呂場のドアをバーンと開けた。

 ○○の目の中に入る様々な光景。“相応しい風呂場”のユニットバスの光景。

「ジェイク・・・」

 ○○はゆっくりと視線をジェイクに移した。

 ユニットバス・・・。つまり、浴槽をカーテンで仕切って、その傍に洗面台とトイレがある訳だが・・・。なぜ、バラの形のバスフィザーが洋式トイレの上部分である、手洗い場の水が出る真下に置いてあるのだろうか。なぜ、泡立てネットが洗面台の蛇口にぶら下げられているのだろうか。しかも、その中にはバスコンフェッティが全部入っている。

「俺ってやっぱりセンスあんな〜!」

 ジェイクは得意げにガハハと笑う。

「ジェイク・・・これは?」

 ○○は残念な眼差しで、便器の手洗い場にあるバスフィザーを指さした。

「ああ!コイツな!?コイツはおめぇ、便所のアレじゃねぇか!・・・ほら!ガキん時よぉ、男子便所の立ってする方の便器に、黄色くてまんまるいヤツが置いてあったじぇねぇか!コロコロしてよ!でも、この洋式便所にそんなもん置いたら絶対に詰まるから、手洗い場に置いた」

 たまに雨の日なんか下水管から匂いが上がってくるから、いい匂いのするコイツで丁度いいじゃねぇかと、ジェイクは腕を組みながらうんうんと納得している。

 つまり、入浴料であるバスフィザーがトイレの芳香剤になっている。

「あー・・・じゃあ、ジェイク、これは?」

 ○○はため息をつきながら洗面台の泡立てネットを指差した。

「コイツは泡立てネットだろ?なら、ちゃんと泡立ててやらねぇと、このネットがかわいそうじゃねぇか!石けんも使ってやらねぇと!」

 そんな、一気に全部の石けんを使わなくてもいいじゃないか。そして、そのネットは洗顔の時に使うのだ。そう言いたくて○○は口を開きかけた。

「泡立てネット!泡、立てねぇと!!!」

 ジェイクのおやじギャグ。○○は開きかけた口が塞がらない。先程、これらは“バスセット”だと言ったはずなのに。“今日コレを使うのに相応しい風呂場にするぜ”とは何だったのか。“コレを使う”と言ったジェイクは、コレの使い道を理解していたのではないのか。

 ○○がこれでもかと言う程残念な目でジェイクを見つめれば、そんな視線などお構いなしのジェイクは、浴槽の縁に足を掛けてシャワーを手に取ったところだった。

「あっ!」

 急いで風呂場から脱出しないとまずいと、○○は回れ右をして風呂場のドアノブに手を掛ける。

 しかし、一歩遅かった。

―アィ ウォンチュウゥゥゥゥ〜ッヤッ!

―ゥオゥ〜ウゥゥ!オウ!シュケナベイベー!!

 小さな風呂場にジェイクの馬鹿でかい声が反響しはじめる。

「うるさっ!」

 ○○は両耳を塞ぎ、自分が買ってきたバスセットの中身たちとジェイクを悲惨な顔で交互に見つめた。

悪だわ・・・今日は


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