「ジェイク・・・掃除は?」
瀕死状態から回復した○○は、未だに掃除機のホースをマイクスタンドのように抱えているジェイクを見上げた。
「ん?終わってねぇよ?ってか、おめぇが買い物に行ってから掃除なんかしてねぇ」
“だってつまんねぇんだもん”と掃除機のホースを放り、ベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせたジェイク。
○○が目だけを動かして部屋を見渡すと、確かに散らかったままの部屋。いや、寧ろ、歌いながらジェイクが暴れた分、酷くなった気がする。
「それより、おめぇは何買って来たんだよ」
「えっ?あ、あぁ・・・」
○○はジェイクの横に腰掛けると、先程買ってきた物を取り出した。
○○が買ってきた物はバスセットだった。近くにできたばかりの雑貨屋で売っている物だ。ハート型をしたプラスチック容器の中に、バラをかたどったピンク色のバスフィザー(※バスフィズとも 入浴料のこと)、バラの花びらをかたどったバスコンフェッティ(※紙風造形石けん)、泡立てネットが入っていた。
あまりにも殺風景なジェイクの各部屋。バスセットなどは殆ど女の子が使うものだけど、いい香りもするし、普通の入浴剤と大して変わりないから、たまにはジェイクが使うのも気分転換になっていいかなと思った故だった。風呂で戯れるジェイクは想像したくないが。
「よし!じゃあこれから俺が、風呂場の掃除してくるぜ!」
○○の話もそこそこに、ジェイクは“今日コレを使うのに相応しい風呂場にするぜ”とバスセットを手に取り、部屋を出て行こうとする。
「ジェイク!このバスセット、使うのお風呂に入る時だよ?」
「いいんだよ!おめぇが買ってきてくれたのを傍に置きながら気合入れんだよ!おめぇは俺の部屋の掃除を頼むぜ!」
ジェイクはそう言うと、歯を出してニッ笑った。
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