I'll never forget my broken heart...

「・・・○○」

「・・・はい・・・」

 しばらく経ってキッチンから戻ってきたベクターの声に、俯いたまま返事を返す。

「これが何かわかるか?」

 コタツのテーブルの中央に何かがゴトリと置かれた。

「・・・お鍋です・・・」

 ベクターが置いた物は片手鍋だった。しかし、ベクターの欲する答えではないのか、○○の言葉を聞いたベクターの表情が曇る。

「・・・違う。鍋の中身だ」

 鍋の取っ手を掴み、俯く○○の前に静かに寄せる。鍋の中からは甘い香りがした。○○もよく知るこの香り。

「・・・私の作った・・・チョコ・・・?」

 ○○は、涙で濡れた目をゆっくりとベクターに向けた。

 鍋の中身は、ドロドロに溶けて液状となった、○○の作ったチョコレートだった。

「そうだ!お前が作ってくれたチョコだ!ビターチョコとホワイトチョコが混ざって、いい感じに甘い」

 そう言った後に、ベクターは大きく深呼吸すると、○○に真剣な目を向けた。

「いいか?聞いてくれ。・・・こんなにドロドロになる程俺の心を溶かして、こんなにも甘くさせるのは、○○、お前しか居ないんだ」

 ベクターはコタツの中に手を入れ、ある小さな箱を取り出すと、○○の手にそっと乗せる。

「開けてみてくれ」

 ○○はどうしていいかわからず、手に箱を持ったまま、自分の傍に座るベクターの顔を見上げた。

 そんな○○を見て、ベクターは優しく目で合図する。“開けてくれ”と。

 ○○は涙で濡れた手を、躊躇いながらもゆっくりと動かした。

「・・・!?これって・・・!?」

 小さな箱の中には、指輪が入っていた。プラチナの白金が輝くリングの中央に、ダイヤが美しく光っている。

「○○、結婚してくれるか?」

 静かに、はっきりと聞こえたベクターの声。

「・・・でも!・・・私たち、『終わり』なんでしょう・・・?」

「いつまでも恋人のこの関係は『終わり』だ。俺は・・・この先の道のりを、お前以外に考えたことがない。ならば、俺がこれからすることはただ一つだ」

 ベクターは、○○にずっとこの言葉を言いたかった。しかし、何度告白の練習をしてもうまくいかず、どのようにして想いを伝えればいいのかわからなかった。しかし、○○のチョコレートを見てから“当たって砕けろ”と思うことができ、最終的に自分の素直な気持ちを口にしたのだった。

「ごめんな。紛らわしい言い方になっちまって」

「・・・傍に居て・・・いいの?」

「居てくれなきゃ困る。それに・・・」

 嫌だと言っても、俺はお前を離さない。

「べ、・・・クター・・・!」

 ○○の目から、先程とは違う涙が流れた。

 ベクターはゆっくりと○○を引き寄せる。

 ベクターの胸に顔をうずめて、○○は嬉し涙を溢れさせた。




I'll never forget my broken heart...
I thank my broken heart...


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熱い絡み出演・・・メフィス様 Thanks!
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