の髪、彼女の髪

「ピアーズの髪ってキレイだよね〜」

 自分の隣を歩く○○の言葉にピアーズは首をかしげる。

「そんなことないだろ。○○の方が断然・・・」

 言いながら、ピアーズは自分の髪に触れる。触れたところで、自分は短髪だから見える訳ではないのだが。

「ううん。すっごくキレイ!!」

 ○○は楽しそうに言う。

 夕焼けの土手を散歩していた○○とピアーズ。行先なんかは決めずに、ただ喋りながら一緒に歩く。端から見れば「安い」と思うかもしれない。しかし、かしこまったデートよりも、フランスのフルコースのような緊張して肩っ苦しい食事よりも、ゆっくりと時が流れていくこの時間が、○○は大好きだった。

「もともと、ピアーズの髪って茶色でキレイだけど、夕日が当たると金色っぽく見えるんだね!」 

 ○○は夕日の当たったピアーズの髪を見ていた。彼の茶色い髪が金色に輝いて見えるのだ。

「いいな〜!!」

「こっちの方が」

 ピアーズの髪に触れようと手を伸ばす○○よりも先に、ピアーズは○○の髪をすくう。

「○○の髪の方がサラサラだし、ずっとキレイだよ」

 先程すくった○○の髪を、風にサラサラと流す。その風にのって彼女のシャンプーの香りがピアーズの鼻をかすめた。

「俺なんかよりずっといい匂い」

 そう言うと、ピアーズは微笑んだ。

 ピアーズのその微笑みが、夕日に照らされた顔が恰好よくて、○○は照れたようにはにかんだ。

「ほら」

 言われた先を辿れば、差し出されたピアーズの手。ゆっくりと手を重ねると二人して微笑んだ。


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