れてもいいか?

「スペクターさん、初めて私を抱き締めてくれましたね!」

 え・・・?

 そう、スペクターは無意識のうちに○○を引き寄せ、力強く抱き締めていたのだ。

 あれ程、○○に触れることや抱き締めることに注意を払っていたのに、このような状況や、また、無意識とは恐ろしいものだとスペクターはただ呆然と目の前の景色を見つめた。

「・・・私、実はずっとスペクターさんに抱き締めてもらいたかったんです。でも・・・そんな我儘言って困らせたくなくて・・・スペクターさん、大好きだか・・・きゃっ!」

 言い終わらないうちに、スペクターはこれでもかと言う程強く、○○を抱き締め直した。

「俺は・・・急に触れたりして○○を怖がらせたくなかった・・・お前が・・・大切だから・・・」

 スペクターも○○も互いに同じだったのだ。相手が好きで大切にしたいが故に、他の人なら簡単にできることも、この二人にとっては簡単なことではなかった。

 しかしそれが今、二人にはとても心地よく感じられた。簡単なことではないと思う程、相手を想い、また自分も想われているのだから。

「○○・・・大好きだ」

 しかし、そうは言ってもやはり、慎重すぎる程慎重に彼女を扱いたいというスペクターの気持ちは変わらない。

「○○・・・触れてもいいか?」

「スペクターさんになら、幾らでも触れてもらいたいです」

 柔らかな○○の髪にゆっくりと手を入れたスペクターは、しっかりと彼女の頭を支え、その唇にそっと己の唇を重ねた。


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