触れてもいいか?
○○と別れた喫茶店を通り過ぎ、彼女の背中が見えなくなった場所まで突っ走る。
―スペクターさーんっ!!
徐々にはっきりと聞こえる己を呼ぶ声に、スペクターは地面を蹴る足に更に力をこめた。
「○○っ!・・・って・・・え?」
○○の声に導かれ着いた場所は公園だった。必死に○○の姿を探すと、野良犬に追いかけられて滑り台に上り、うずくまっていた。
何だこの光景は・・・。
スペクターは唖然としてしまった。最初に聞こえた音、そして己を呼ぶ声に、○○に何があったのかとこれ以上ないくらい心配していたのだ。もしも変な男に襲われでもしていたら・・・と恐怖さえ覚えていたのだ。
それが・・・これ・・・なのか!?
いや、これだからよかったのか。○○の身に何もなかったのだ。よくない訳がない。
スペクターは滑り台の下でウロウロと、いつまでも吠え続ける野良犬を追い払った。それを見ていた○○がゆっくりと滑り台から下りて来る。
「大丈夫か?・・・全く・・・俺の心臓が潰れるだろ・・・!!」
「ご、ごめんなさ・・・あっ・・・!」
スペクターを見上げ、嬉しそうな声を上げた○○。
「スペクターさん、初めて私を抱き締めてくれましたね!」
[ back to top ]