後の言葉

 もの凄い勢いで宙を高速移動する○○。しかし、その体は目的地に辿り着くことなく壁に叩き付けられた。そして、麺類をすするかの如くズルズルという効果音がぴったりな程、壁に体を擦りながら上へと上がって行く。

「い・・・痛い・・・っ」

 ○○はフックショットの練習をしていた。フックショットができれば戦いも随分と楽になる。それに、常にエイダを映すレオンの目に映るためには、フックショットをできるようにするのが一番手っ取り早いからだ。

 フックショットで目的地付近まで飛んで行くのはいい。しかし、最後の最後ができない。着地する寸前に宙返りをしなければいけないのに、フックショットの高速ではどう頑張っても宙返りなどできない。“くるんっ”とできなければ、壁に激突して大怪我をするしかないのだ。

「○○、君は毎日何の練習をしているんだ?」

 壁に激突して地面に落ちた○○にレオンが近づいた。

「フックショットの練習」

 “見ればわかるでしょ”とかわいくない口を利きながら○○は立ち上がり、遠くの空を見つめた。

「君はそれを練習する必要はないだろう」

「どうしてよ。そんなにフックショットをするエイダさんが特別?」

 やっぱりどんなことをしても、あなたは私を映してはくれないんだね。

 毎日毎日、フックショットを練習し続ける○○の体は傷だらけで、そろそろ限界を迎えていた。

 それでも○○は遠くの壁目がけてフックショットを放った。

 レオンが見つめる中、○○は再び激突し、ズルズルと壁に擦りながら上に上がって行く。しかし、体を支えていた片手が、フックショットから力なく放れた。

「○○ーーーーーっ!!!!」

 遠くで断末魔のような、世界最後の日に上げるような、レオンの叫び声が響いた。


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