Jake bought a FAKE OVER KNEE.
ヒールのパンプスで、猛スピードでショッピングモールを出て、来た道を戻る○○。待ち合わせ場所だった公園まで来ると、人が居ないことを確認した。
「ふぅ。あ〜痛かった!もう脱いじゃえ脱いじゃえ!」
誰も居ないことをいいことに、ニーハイソックスを脱いだ○○。痛みから解放されてすっきりしたと空を見上げた。
「それにしても、ジェイクのヤツ〜!!ぶっ飛ばしてやればよかったかな?あ〜あ、ニーハイなんて慣れないもの履くんじゃなかったよ〜」
あの場では周りの目があったために、ぶっ飛ばすのを控えた○○。しかし、誰も居ない公園などでなら、絶対に張り手をする自信があった。あの時、自分は演技をしたのだ。悲しげに恋人を見つめるヒロインを。あれだけバカにされたのだ、これくらいはしてやらないと。“この後、男は追いかけてくるものなのよ。絶対!”と○○は密かにニヤニヤした。
「あれくらいで泣くような私ではないわ〜!!」
ところが・・・。
「あれ?ジェイクが来ない・・・!?」
○○はチッと舌打ちをすると、両手に黒いニーハイソックスを持ち、自分のマンションへとドカドカと歩き出した。
一方その頃・・・。
「この店で一番厚いタイツはどれだ!?」
ジェイクは、あの場付近にあった「オシャレソックス店 Mike」を見つけ、厚手タイツを選んでいた。もちろん、デニール数などはジェイクにはわからない。それどころか、タイツとストッキングの違いもよく知らない。
「全く・・・急いでんのになぁ」
ジェイクの「生足を止めさせる作戦」は見事に失敗していた。他の女性の脚を褒めることで、○○に生足を止めさせようととしたジェイク。『ホントはさみーくせに、よくぞまぁ、そんな似合わねぇ恰好をしたもんだ』というのは、「この寒い時期にニーハイは相応しくない」というジェイクの解釈で、これを聞けば○○も生足を止めるだろうと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。○○は「似合わない」の部分を「自分には」と考えてしまったのだ。当たり前だ。あんな遠回しで曖昧な言い方をしたのだから。
「おい、コイツはあったけぇのか?」
そこらへんに居た店員を呼びつけ、FAKE OVER KNEEと書かれた商品を指さす。もちろん、このフェイク・オーバー・ニーというものが、どういうものかはジェイクにはわからない。しかし、「オシャレソックス店 Mike」の中のタイツ・ストッキングコーナーに置いてあることから、自分が指さす商品がオシャレで脚の保護をするものだということぐらいはジェイクにもわかった。
「はい。凄く温かいですよ。デニール数も―」
「よし!じゃあ、コイツをくれ!」
店員が言い終わらないうちに、ジェイクは商品を手に取り、レジへと促す。
「プレゼント用にされますか?」
「いや、大丈夫だ。テープでいい!」
釣りはとっとけ!とお金を押し付けると、ジェイクはテープを貼っただけの商品を引っ掴み全力で走り出した。
早く○○の元へ行かなくてはと急ぐ気持ちもそうだが、早く店から出たかったのだ。やたらと周りからジロジロ見られている感じがして居心地が悪かった。
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