Jake bought a FAKE OVER KNEE.
「・・・ねぇ、ジェイク・・・?」
お手洗いに行ってきてもいい?と○○が訊いた。自分でもこんな時にトイレか!と思ったが、今、この状況でジェイクの横に居られる自信が○○にはなかった。トイレから戻ってきたら案外けろっとしているかもしれないと、間違いなく100%できない期待をほんの少しでもしたかったのだ。それに、○○にはどうしてもトイレに行きたい理由があった。自分の太股が悲鳴をあげていたのだ。どうしても、靴下を下げたかった。実は、親友が選んだニーハイソックスの太股部分のゴムの締め付けが痛くなってきたのである。その部分をそっと捲ると、見事に赤くなっていて太股にしっかりと食い込んだ痕がついていた。やっぱり自分は脚が太いのだとがっかりした。人前でニーハイソックスを下げて、赤くなったゴムの締め付け痕を晒す訳にもいかず、バッグでそこを隠していたのだが、遂に限界を迎えたようだ。
「ちょっと行ってくるね。戻ってきたら、お昼でも食べよう」
「待て」
○○がトイレに行こうとすると、ジェイクが彼女の腕を掴んだ。
「ど、どうしたの?」
○○が振り向くと、ジェイクの鋭い瞳が自分を見ていた。
「お前、その靴下はどういうヤツが履くか知ってるか?」
早くトイレに行きたいと思うも、○○はジェイクに答えた。
「・・・脚が細い人?」
「そう!」
ここで初めてジェイクが笑った。“やった!ジェイクが笑った!”と○○は嬉しくなり話を続けようと口を開いた。
「だから、おめぇみたいなのが履くんじゃダメなんだよ!」
口を開いた瞬間に聞こえたジェイクの言葉。
「―え・・・?」
「アレを見てみろよ」
ジェイクの指先を辿ると、細くて長い、綺麗な脚の女の人が居た。自分の脚とは全く違う脚。
「ああいう姉ちゃんみてぇなのが履くんじゃねぇのか?そのニーハイってのは」
ジェイクは○○を見つめたまま続けた。
○○はだんだんと自分の体が熱くなるのを感じた。ずっと無言だったジェイクを、どうかしたのか、調子が悪いのかと心配していたのに、何か気に障ることでもしてしまったのかと心配していたのに、この買い物を凄く楽しみにしていたのに、自分は他の女の人の脚と比べられて、バカにされる対象とされていたのだ。
「ホントはさみーくせに、よくぞまぁ、そんな似合わねぇ恰好をしたもんだ、お前―」
ジェイクは笑うように話しながら、視線を一度、○○の脚に落とした後、また○○の顔に戻した。その途端、はっとしたジェイク。
「・・・ジェイク・・・私、帰るね・・・」
○○は寂しそうに言うと、ジェイクに背を向けた。
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