Warmhearted Christmas
ビルの正面玄関が開く音と、街頭の明りによってできた人影を辿ると、ちょうどピアーズが玄関から出てきて小階段を下りたところだった。雪が降っていることに今気付いたのだろうか、ピアーズは降ってくる雪を掌で受け止め、笑っている。
今だ!
○○はピアーズの方へ体を向けた。心臓がバクバクしていて煩いことこの上ないが、そんなの気にしない。いや、気にしたら負けだ。そう自分に言い聞かせると、大きく深呼吸し、彼の名前を呼んだ。
「ピアー・・・・・・」
突如、○○の声は何者かによって阻まれた。自分の後ろから小走りにやって来るヒールの音がする。「ピアーズ!!」と元気に彼を呼ぶ声が更に聞こえた。
その声の主は、ちょうど、○○やピアーズと同じ歳くらいの女性だった。その女性はピアーズの元へ駆け寄ると、ニッコリと笑った。
誰なんだろう・・・あの女の人・・・。
二人の間に割って入る訳にもいかず、○○はただその場につっ立って二人を見つめていた。その○○の視線に気づいたのか、女は○○に向かって口の端を釣り上げて笑った。
―きゃあっ!!!
―大丈夫か?
女が滑りそうになったのだ。いや、○○が見ている前でわざと滑ったのだ。しかし、ピアーズはそのことを疑いもせずに、女を抱きとめるように支えていた。
―大丈夫。ありがとう。
女は満面の笑みでピアーズに礼を言うと、ゆっくりと体制を立て直した。
―ピアーズ、この後、一緒に食事でも行かない?
女のその言葉が聞こえた瞬間、咄嗟に、○○はその場から走り去った。彼女に対するピアーズの返事など、聞きたくなかった。
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