導権はにない

「ベク―んっ!」

 初めての口付けに追いつかない思考。深緑色の帯と結い上げられた髪は、ベクターによってゆっくりと解かれていく。

「ベクター・・・さ・・・ん、灯り・・・消して・・・んんっ!」

「灯りなんか点いてないだろう」

 ベクターはふっと笑った。○○から“好き”と答えが出た頃には、すっかりと夜になっていたのだ。雨戸を閉めなくても辺りは暗いため、誰に見られる心配もない。

「・・・庭の・・・」

 ○○は庭へと顔を向ける。ベクターも○○の視線を辿れば、苔庭の灯篭にちゃっかりと火が灯っていた。○○からすれば、庭にある少しの灯りも気になるらしい。灯篭の灯りではその周りしか見えないというのに。

 ベクターは灯篭を見やると同時に○○の胸に触れる。

「きゃあっ!」

 びくりと震える○○の身体。その反応がかわいくて、ベクターはまたふっと笑った。

「かわいい反応をしてくれる・・・」

 言いながらベクターは片腕を伸ばすを、ある物のスイッチを入れた。○○の身体の輪郭がうっすらと浮かび上がる。

「灯篭では、お前は見えないぞ」

「や・・・常夜灯なんか入れないで・・・」

「ダメだ。ずっとこうしたいと思っていた・・・お前をもっとよく見たい」

「あっ!!」

 ベクターの舌が、頂きに触れた。

「やぁ・・・ん・・・ん・・・!」

 もう片方の頂きを指先で転がされ、○○は堪らずに吐息を漏らす。

「○○・・・気持ちいいのか?」

 実際のところ、こんなことをされるのは○○は初めてで、この感覚が“気持ちいい”と言うべき物なのかわからない。しかし、嫌ではない感覚が全身に行き渡っていた。

「・・・ううん・・・」

 男の人の前で、裸で、しかもこんなことをされていて恥ずかしくて堪らない。○○は吐息混じりに首を横に振って見せた。

「気持ちよくないのか?・・・じゃあ、これはいったいどうしたんだ?」

 頂きにあった顔を上げ、ベクターは意地悪げに○○を見る。

 誰もが見てもわかる程に、○○の頂きは固くなっていた。

「気持ちよくないなら、気持ちよくさせるまでだな」

 主導権は○○にない。

「んん・・・っあっ・・・!」


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