主導権は私にない
夕食も終え、温かい日本茶を飲んでいた時だった。“知りたいことがある”、それを言うためか、ベクターは静かに湯呑を置いた。
「○○」
胡坐をかいていた脚はいつの間にか正座になり、両手はその太股の上にきちんと置かれている。
ベクターの真剣な眼差しに、○○も彼と同じように姿勢を正した。
「好きだ」
「え?」
「好きだ」
驚きと困惑の表情を浮かべる○○。何が起こったかわからないかのように、目を見開き、ただただベクターを見つめた。暫くして出てきた言葉は、
「う、嘘ぉ!?どっ、どうして!?」
素っ頓狂な物だった。
「嘘な訳があるか。好きでもない女をクリスマスの『特別』な日に誘うか!」
そう言うと、冷静なだったベクターが初めて頬を赤くした。
「どうしてもこうも、好きなんだ。『好き』に理由が必要か?」
人を好きになるのに理由はない。本当に、心から、ベクターは○○が好きだった。『何で好きなのか』という理由を探す必要もないくらい、本当に好きだった。
「・・・私は・・・」
長い沈黙だった。
「・・・好きです・・・」
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