カボチャ畑のベルトウェイ
「―そう言えば・・・ベルトウェイさんはパーティーには行かないんですか?」
二人で賑やかにしていたベルトウェイのキッチンでの、唐突な○○の言葉だった。“パーティー”、つまり街で行われるハロウィンパーティーのことだ。誰でも参加できるパーティーで、○○の友達も参加する者は少なくなかった。○○も友達から誘われていた。しかし、全て断っていた。それはなぜか・・・・。
それは・・・。
ベルトウェイのことが好きだから。
彼のカボチャ畑に来るようになり、彼の良い所がどんどんわかっていった。元々、周りの人間がする噂などは気にしていなかったが、彼と接する内に、そんな噂は本当に「ただの噂でしかない」と実感した。いつも元気で優しいベルトウェイ。畑仕事の仕方を丁寧に教えてくれた。声大きく笑い合い、畑中に響き渡る程笑ったこともある。地面にどっかりと腰を下ろし、大きな身体をちょっと丸めながら自慢のカボチャに頬擦りをするベルトウェイが、何だかかわいかった。その時の目を瞑った優しい顔が、すごく綺麗だった。
そんなベルトウェイを、○○はいつしか大好きになっていた。
「あ〜・・・」
言葉を濁すように押し黙るベルトウェイ。卵を掻き混ぜていた手も徐々にゆっくりとなる。
「行・・・かないな。まぁ・・・」
ベルトウェイはゆっくりと○○を見つめた。そして、一瞬だけ悲しそうな顔をすると、いつもの大声と笑顔でニカッと笑った。
「俺がパーティーに行ったら、みんな俺の所に来て“お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!”って言うだろ〜!!俺だって菓子が欲しいんだぞ!!それなのに、何で俺があげなきゃいけないんだよ〜!」
ガハハと笑いながら、ベルトウェイはくるりと後ろを向く。その時、「俺と一緒に居てもろくなことないしな・・・」という小さな声が聞こえた。
○○にはわかっていた。たった今聞こえた彼の言葉は、噂を指していることを。
彼が噂を気にしているかどうかはわからない。しかし、優しい彼のことだ。きっと、○○が自分と一緒に居ることで周りからそういう目で見られることを心配したのだろう。
「だからな・・・」
ゆっくりと言葉を発すると、ベルトウェイは○○を見つめ、目の高さを合わせた。
「パイを食ったら・・・友達とパーティーに行ってきな・・・」
「ベルトウェイさん・・・・・・」
[ back to top ]