Warmhearted Christmas

 ○○とピアーズは手芸店に買い物に来ていた。○○が手芸店へ行く途中、ばったりとピアーズに出会い、一緒にお茶をした。そして、「買い物に行く」と言った○○にピアーズも一緒について来たのだ。

 男では手芸店など全くと言っていい程来ないだろう。ピアーズは珍しそうに店の中を見回している。○○はそんなピアーズを見ながら、様々な毛糸玉を楽しそうに手に取り選んでいた。二人は別に付き合っている訳ではない。○○はそうなることを望んでいるのだが・・・。毛糸を買いに来たのも、実はピアーズへのプレゼントを作ろうと思ったからなのだ。○○は手芸が大好きで、また、得意でもあった。来月はクリスマスだから、「クリスマス」という理由でプレゼントを渡し、それと同時に思い切って告白しようと考えていたのだ。そう、「クリスマスに告白」という無謀なことを考える程、ずっと○○はピアーズが大好きだったのだ。

「ねぇ○○、こんなにたくさんの毛糸、どうするの?」

 ピアーズが籠の中を指差した。

 籠の中にはダークグリーンの毛糸玉が幾つも入っていた。

 最初から○○はマフラーを編もうと決めていた。いつもピアーズが首に巻いている物のように。どの色よりも、深く落ち着いた色がピアーズには似合っていた。チャコールグレーの方がいいか、しばらく迷っていたのだが、結局ダークグリーンにしたのだった。マフラーの模様にもこだわりたかった。そうすると、結構な量の毛糸を使うので、籠の中に大量の毛糸玉を入れていたのだ。

『ピアーズさんのマフラーを編もうと思って・・・』などと言えるはずがない。

「もう少しすると寒くなるから、何かあもうと思って・・・」

「ああ!編み物か!」

 一瞬、きょとんとした表情をしたピアーズだったが、すぐに納得した様子で胸の前で手を叩いた。そして、目の前の毛糸玉を手に取り、じっと見つめた。

 あ・・・もしかしたら、ピアーズさんは毛糸が好きじゃないのかも・・・。

 ピアーズがいつも首に巻いている物は、実は綿100%や、シルクや、他の肌触りのよい最高級の物かもしれない。○○が今買おうとしている毛糸は、こだわりでウール100%で高級だし肌触りもよいが、多少はチクチクする。もしかしたらピアーズは、そのチクチクが嫌なのかもしれない。毛糸玉を見つめるピアーズの表情を見て、○○は少し不安になった。


「持つよ」

 レジを済ませると、ピアーズが毛糸玉と編み棒の入った包みを持ってくれた。



 これが、一か月前のことだった。


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