士のメリークリスマス

「・・・・・・ん・・・・・・」

 翌朝、○○は眩しい朝日を感じ目を開けた。昨日、どうしてもハンクに会いたい気持ちを我慢できなくて彼の家に来た。もちろん、家に来たところでハンクには会えないのだが。そのまま彼のベッドに潜り込んだのを覚えている。ベッドに入るとハンクの香りが広がり、その香りで少しは気持ちが落ち着くかと思ったのだが、実際は会いたい気持ちを増加させるだけの要因にしかならなく、余計に切なくなったのだった。

 しかし、幸せな夢を見た。ハンクの腕の中で眠った夢だ。

 すごくあったかかったな・・・・・・。

 夢の中で自分は、ハンクが居ることと、ハンクにしっかりと守られていることで、安心して眠っていた。

 ○○は辺りを見回した。しかし、ハンクの姿はない。

「やっぱり夢か・・・」

 視界が滲み始め、とうとう一筋の涙が頬を伝った。急いでその涙を拭おうと手を動かすと、何かに指先が触れた。

 自分が寝ていた枕のすぐ横に置いてある物。薄ピンクのかわいらしい色をした包装紙に、ワイン色のリボンがされた小箱。

 これって・・・!?

「マスター!?」

 ○○は小箱を持ったまま、寝室を飛び出し、キッチンのドアを勢いよく開けた。すると、立ったままでコーヒーを飲むハンクの後ろ姿が目に入った。

 振り向いたハンクがゆっくりと近づいてくる。すると、突然目の前が暗くなった。ハンクに抱きしめられたのだ。

「すまなかったな」

 ○○を抱きしめたまま、ハンクは話した。今回の休みのことを言えなかった訳を。そして、○○が手に持っている小箱が自分からのプレゼントだと言うことを。

 ○○を抱きしめるハンクの胸元を、彼女の涙が濡らした。これが、○○が初めてハンクに見せる涙だろう。しゃくり上げる彼女の背中を摩れば、○○はハンクの胸に顔をうずめて大粒の涙を流した。



 しばらくして、○○がハンクの胸から顔を上げた。

「マスター、これ開けてもいい?」

 目をこすりながら、由美がハンクを見上げた。ゆっくりとリボンを解いて箱を開けると、そこには互いの写真が入れられるロケットが入っていた。○○が驚いたようにハンクとペンダントを交互に見る。

「それがあれば、いつも一緒だ」

 ハンクは○○の頬に触れ、言葉を続ける。

「何か欲しい物はあるか?」

「・・・マスターが・・・」

「ん?」

 ゆっくりと、○○がハンクの背中に腕を回す。

「マスターが欲しいです・・・ずっと・・・ずっとずっと一緒に居て下さい」

「喜んで」

 ハンクは優しく微笑むと○○に深い口付けをした。


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