っとお前だけを見ていた

「○○」

「何?スペクター・・・」

 いつの間にか目の前に居るスペクターに、○○はぼんやりと顔を上げた。

「○○、もうアイツのことなんか忘れろよ」

「“アイツ”って・・・誰!?」

 ○○は怪訝な表情でスペクターを見つめた。スペクターに去年のことを話した覚えはない。「彼のことを考えるだけで幸せだった時」の話をしたこともない。スペクターがそういう類のことを、況して去年のことなど知っている訳がないのだ。

「何?“アイツ”って」

「・・・去年の今日の・・・あの男のことだよ・・・」

 大きく見開かれる○○の目。何かを言おうとして開きかけた彼女の口は震えていた。

「・・・・・・どうして・・・スペクターが・・・そんなこと知ってるの・・・?」

 ○○の目は涙でいっぱいだった。

「調べたの?スペクター。・・・私が誰にもチョコ渡さないから?それで面白がってあんなこと言ったの!?」

 “俺には・・・くれないのか?俺は欲しいんだけどな・・・お前のチョコ・・・”って。

「・・・酷いよ・・・スペクター・・・」

 ○○は俯き、涙で濡れた顔を両手で覆った。

 “スペクターなんか・・・大っ嫌い・・・”そう言い残し、○○はスペクターの視界から消えた。


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