っとお前だけを見ていた

 バレンタインデー当日の昼休み、U.S.S.の休憩室で○○とスペクターはトランプをしていた。

「○○は誰に渡すんだ?」

 スペクターは○○に質問を投げ掛ける。そんなこと訊かなくても、答えは既にわかっているのだが。

「誰にもあげないよ」

 “やっぱりな”とスペクターは心の中でため息をつく。

「何でだ?」

 この質問もわざと訊く。

「何でも」

 悲しい色を含んだ○○の目。○○がバレンタインを嫌っていることは知っている。全ての質問の答えも初めからわかっていたことだった。

「俺には・・・くれないのか?」

「・・・チョコの催促なら、他の子にして・・・」

 その言葉と共に、最後の一枚のトランプが静かにテーブルに置かれた。

 なぁ、○○、お前の中にはまだあいつが居るのか?いい加減、俺にしろよ・・・。

「俺は欲しいんだけどな・・・お前のチョコ・・・」

「止めてよ!!私はチョコなんかあげないって言ってるでしょ!?」

 声を荒らげる○○。泣きそうな目をしてスペクターを見つめた。

「止めてよ・・・」

 ○○は弱々しく呟き、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 ・・・俺が本当に欲しいのはチョコなんかじゃない。お前の笑顔なんだよ。


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