熱の赤いバラ

「ニコラ〜イ!!」

 残業が終わって岐路に着く前に、○○はニコライを探していた。

「ニコラ〜イ!どこ〜!?」

 すると、突然現れた黒い影。

「グッド・イブニング、お嬢さん。このニコライをお呼びかな?」

「あのね・・・」

 ○○はバッグの中から、かわいらしい包みを取り出した。

「はい!これ!あっ、義理チョコだよ?」

 “義理チョコ”とは言ったけど、本当は少しニコライが気になっている。でも、何だか恥ずかしいから、今はこれで・・・。

「ありがたく受け取るとしよう」

 昼間は催促してたくせに、キザだな〜。

「私の情熱を捧げるのはただ一人・・・お嬢さん?」

 ニコライはどこからか、一本の赤いバラを取り出した。

「お嬢さんはこのニコライに、言うべき言葉があるのではないか?」

 これは告白しろってことですか・・・?って言うかなんだろう、この“告白しろ”みたいな感じは・・・。でも、これ逃したら次はあるのかな・・・?

「・・・毎日毎日バラ持って朝・昼・晩に来て、けっこう、いや、かなり暑苦しいしむさ苦しいけど、はっきり言ってキザで何考えてるのかわからないけど、そんなニコライが・・・気になってます」

「まさかこのニコライの情熱を受けとらないとは言わないな?」

「今告白したでしょう!!」

 何聞いてたんだろう、この男は・・・。

 呆れていると、視界いっぱいに映ったのは真っ赤なバラの花束。いつの間にか花束が自分の手に渡されている。しかしニコライは既に居ない。

「あれ?ニコラ〜イ?」

 あっちこっち見渡す○○。すると、明りの下で人影が見えた。

 左右に激しく揺れ、高く跳ねながらスキップする人物・・・あれは紛れもなくニコライだった。




 次の日の朝。

「グッド・イブニング、お嬢さん。このニコライの情熱の赤いバラを受け取りたまえ」

 そう言いながら近づいて来るニコライ。

 そのニコライの姿に、周りの人間はぎょっとする。

 ヘラッヘラににやけた顔に、手も足も大きく広げ、左右に激しく揺れ高く跳ねるスキップ。そしてその手には―。

 たくさんの情熱の赤いバラ。


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