俺のバレンタイン
仕事が終わり自宅へと帰ってきたピアーズ。寝室の床に鞄を置くとそのままベッドにダイブした。
あぁ疲れた・・・。
今日はバレンタインデーでどの部署の男女も浮ついていた。終始響き渡る黄色い声と地響きに全く仕事にならなかったのだ。ピアーズにチョコレートを渡そうとやって来た女も居たが、ピアーズは貰う気など毛頭なかったので全て丁重にお断りした。故郷で己の帰りを待っていてくれる幼馴染、大切な想い人が居るのだ。
貰えるのならば、○○のがいい・・・。
しかし、なかなか会うこともできない距離に、愛しい人からチョコレートは貰えない。そう思うことはピアーズにとって当たり前だった。それに、恋人同士だからといって全員が全員、贈り物をする訳ではないだろう。もちろん、贈り物をすることで愛を確かめるということもあるが・・・。愛の形だって人それぞれあるのだ。貰えないからといって、どうということはない。
しかしそうは思っていても、贈り物をされて喜んでいる男や、幸せそうに恋人を抱き締める男を見てしまえば、やはり楽しい気持ちなどする訳がなかった。
ピアーズはベッドの上で携帯を開いた。○○からの連絡はなし。
自分を呼ぶ彼女の顔を思い浮かべる。
そんなことをしていると、玄関のベルが鳴る音が聞こえた。
誰だ?こんな時間に。
誰もが仕事が手に着かないという理由で仕事は早く終わったが、客が来る時刻ではない。それに、自分にそんな客など居ない。
もしかして・・・○○か!?
ピアーズはガバリと起き上がった。そして、高鳴る気持ちを抑えつつも、いつもより若干勢いよく玄関のドアを開いた。
しかし、予想もとい、願望は外れた。
宅急便かよ・・・。
ピアーズは心の中で舌打ちをした。しかし、渡された小包に書いてある差出人の名に、ピアーズの顔はぱぁっと明るくなった。
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