噂で聞いた話なんだけど・・・。バレンタインに関する立候補制の任務があるんだって・・・。で、その任務にマスターは参加するらしい。その任務の報酬はお金じゃなくて、チョコみたいなんだけど・・・マスター、そんなにチョコが好きだったんだ・・・。私はずっとマスターが好きなのに・・・報酬にチョコを欲しがらないで、私のチョコを欲しがってよ・・・。あ!もう一つ!その任務は凄い危険な任務なんだって!でも、それに見合うだけの報酬のチョコだとか。私は・・・一緒に任務に行ってそのチョコが何なのかつきとめる!だっておかしいもん!マスターがそんなにチョコを欲しがるなんて!!
チョコレート・サンプルを回収せよ!
その任務に立候補したのは、ハンク、ベクター、スペクター、○○の四人だった。集合し、エレベーターの中で任務の内容を説明される。
「我々はウィリアム・バーキンの研究所に突入する。彼は研究所で秘密のチョコレート・サンプルを作り、卑劣な計画を企てている・・・この施設はU.B.C.Sが警備をしていて、彼らもこのサンプルを狙っている。抵抗してきたら処分していい」
○○はこれだけでは任務内容が理解できず眉を寄せた。しかし、ベクターとスペクターは既に任務内容は知っていたようで、話を先へと促している。
「作戦目的は?」
「バーキンとU.B.C.S.を妨害し、チョコレート・サンプルを奪う」
銃を構えながら研究所への道を慎重に進んで行く。
「あの、マスター・・・。例のチョコレート・サンプルってどんな物なんですか?これって立候補制の任務ですよね?何でマスターが?それにベクターとスペクターも。報酬はチョコですよね?」
詳しい任務内容を知りたかった○○、素直な疑問をハンクにぶつけた。報酬はチョコという変な任務に、なぜ立候補したのか。そんなにチョコが欲しいのか。それよりもまず、チョコレート・サンプルとは何なのか・・・。すると、ハンクが答える前にスペクターが答えた。
「○○、実はな・・・」
「えぇっ!?」
この任務の真実、それは・・・。チョコレート・サンプルとは、惚れ薬、もとい「惚れチョコレート」なのだ。その薬が入ったチョコレートを食べさせれば、その人は食べさせた人を好きになる。報酬は、回収したサンプルのうち、一つを貰える。
「じゃあ、マスターもベクターもスペクターも、自分の物にしたい人が居てこの任務に?」
マスターもきっと好きな人が居て・・・その人に食べさせたいんだきっと・・・
○○は防毒マスクの中で涙を浮かべた。
立候補制の任務なんておかしいと思ってたんだ。そういうことだったんだ・・・。そういう報酬だったんだ・・・。マスター・・・。
「違う。そんな報酬はいらん」
ハンクはただ真っ直ぐ前を見据えていて、言葉だけを○○に返した。
そう、チョコレート・サンプルが欲しいのではない。そのサンプルを使われたくないのだ。○○は気付いていないが、U.S.S.とU.B.C.S.の中で○○は人気がある。そのうち、U.B.C.S.の奴らが、そのサンプルの入ったチョコを○○に食べさせようとしているとの情報を掴んだのだ。真っ先に憤りを覚えたのが、普段は冷静なハンク。実は○○に気があったのだ。一人で任務に行こうとした時、ベクターが加勢し、スペクターも面白そうだからという理由で加勢したのである。
「じゃあ、どうし―」
“じゃあ、どうして”そう○○が言いかけた時、次のフロアへの扉が開いた。通路の先にU.B.C.S.隊員が見え隠れしている。
「行くぞ。失敗は許されない」
ハンクは○○をちらりと見た後に、ベクターとスペクターと顔を見合わせた。
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