「○○、お前、何でそんなに俺のピアノを弾くところを見たがるんだ?」

 再びエスカレーターに乗ると、ジェイクが振り返り、怪訝そうに○○に尋ねた。

「えっ!?」

 ジェイクの唐突な質問に、○○が急に視線を泳がせる。

 ほぅ、何かあるな、こりゃ。

「何でだ?」

 ジェイクが顔を近づけて問い詰めると、○○は俯いてしまった。

「だって・・・?」

「あぁ?」

「だって・・・シェリーさんが、『革命』を弾くジェイクが恰好よかったって言ってたから・・・私、ジェイクがピアノを弾いてる姿なんか見たことないし・・・・・・」

 ○○がつまらなさそうな表情をした。

 なるほど、そういうことか。・・・あのお節介め。余計なことを言わないで欲しいねぇ。

 ジェイクは顎に手を当てながら、○○の顔を覗き込んだ。しかし、『余計なことを言わないで欲しい』と思っている割には、ジェイクの表情は満更でもない。

 要するに、アレだろ。シェリーだけが俺のピアノを弾く姿を見て、彼女であるお前は見てないと。そう言いたいんだろ?

 ジェイクは口の端を釣り上げて微かに笑った。自分の彼女が自分のことで誰かにヤキモチを焼いているのだ。嬉しくないはずがない。

「じゃあ、買い物済ませてさっさと俺ん家に行くぞ!アップルパイ、作ってくれるんだろ?」

「えっ?家で弾いてくれるの?」

「ああ、見せてやる!」

 ○○の腕を引っ張って再び歩き出したジェイクはニヤリと笑った。


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