南瓜野郎と南瓜に目鼻

「何よっ!!!この南瓜野郎っ!!!!!」

 清々しい朝、目の前の男に罵声を浴びせるのは誰か。

「うぅん?何を言う。俺は南瓜野郎と言われる顔はしていない。お前の方こそ南瓜に目鼻ではないか?」

 そして、目の前の女の発言を否定し、「寧ろ南瓜と呼ばれるのはお前だ」と言わんばかりに、さらりとその形容を言ってのけるのは誰か。

 ちなみに、「南瓜野郎」とは容貌の見にくい男を罵って言う語であり、「南瓜に目鼻」とはずんぐりした不美人の形容である。

 しかし、互いに睨み合うのもつかの間、二人は至極嬉しそうに笑う。

「なかなかいいんじゃないか!?○○!!」

「ホント!?スペクターのも良かったよ!!」

 ハロウィンの日に急遽任務になってしまったU.S.S.デルタチームの二人。一緒にハロウィンで賑わう街を見に行こうと約束していたのに、それは叶わぬ夢となってしまった。そこで、せめてもの救いを考え、これから戦う相手に対し、ハロウィンに関する言葉で罵声を浴びせてやろうという考えになったのだ。

「異性から容姿について言われるのって、けっこうズキッとくるよね」

「それが狙いだ」

 ○○が男に罵声を浴びせ、スペクターが女に罵声を浴びせる・・・異性からの容姿に対しての罵声で精神的ショックを与える作戦である。

「俺は閃光手榴弾の色はオレンジと紫と黒にしたぞ」

「え〜っ!!スペクターすごぉいっ!!」

 後ろの棚からそれぞれの色をした閃光手榴弾を取り出し、楽しそうに見せるスペクター。そんな彼に対し、○○は眼を輝かせる。

「あ、そうだそうだ!ねぇ、見て!スペクター!!」

 ○○はクローゼットからある物を取り出すと自分の背に隠す。そして「じゃじゃーん!」と誇らしげに胸の前で開いた。

「おお!それは!」

「えへへ!かわいいでしょ〜!!ハロウィンなら魔女じゃなきゃ!!ベクターのフード、真似しちゃった!!」

 嬉しそうに笑う○○。広げられたそれは、まるでフード付きの真っ黒なロングコートのようである。きちんと戦闘服を着て、その上に防弾チョッキ、そして最後にそのフード付きコートを着るのである。

「でね!魔女と言えば箒でしょ!?」

「ふむ」

「箒も作っちゃった〜!!」

 正確に言えば、「作った」ではなく、U.S.S.と取り引きのある武器会社に「作らせた」である。

 ○○はコートが入っていたクローゼットから箒も取り出して見せる。その箒は長柄で、全てが銀色に輝く鉄でできていた。箒部分は無数の細かい針のような仕様になっていて、刺されたら一溜りもないだろう。長柄なので槍としても使用が可能だ。

「くくく・・・さすがだな、○○」

 自分たちの装備を見つめ、スペクターは不気味な笑みを浮かべる。

「では・・・そろそろ行くとしようか」


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