カボチャ畑のベルトウェイ 2014
「ベルトウェイさ〜ん・・・!」
○○は静かにドアを開くと、様子を窺うようにそっと中に入る。どうしてかわからないが、なぜか大きな声で彼を呼んではいけない気がした。
「ベルトウェ―」
キッチンの方から、何やら声が聞こえた。
足音を立てないように静かに近付く○○。キッチンのガラスドアから携帯電話を耳に当てるベルトウェイが見える。そして、テーブルの上には菓子を作る材料や調理器具が。
戸惑いながら、いけないこととと思いながら、○○はガラスドアの横の壁に身体をぴったり付けてしゃがむ。そして、顔だけを出してドアにそっと耳をくっ付けた。
―なぁ!写メ送ったの、見てくれたか!?
最近では久しく聞いていない元気で楽しそうなベルトウェイの声。
写メ?何の写メ?
○○は眉間に皺を寄せる。
―どうだ!?・・・贈ろうと・・・作ったんだ!
嬉しそうにテーブルの上の物を見ながら話すベルトウェイ。
○○は顔だけを動かしてテーブルの上の物を見ようとする。すると、小麦粉や料理器具の間からオレンジ色の球体のような物が微かに見えた。
この状態から推測すると、ベルトウェイが贈ろうとしている物は菓子類である。
お菓子かぁ・・・でも、いったい誰に!?
贈る相手が自分だったらいいな。と、心の中で半ば期待に近い願いを持ちながら、○○は更にドアに耳を当て、話声をよく聴き取ろうとする。
―アイツに知られないようにするの、大変だったんだぜ〜。
“アイツ”?アイツって誰?
―○○に感付かれたら厄介だからな。
刹那、○○の中で時が止まった。「止まる」と言うよりも、「凍りついた」と言った方が正しいか。
―大丈夫。アイツ・・はこの後すぐ・・・から!
・・・え・・・!?
頭の中が真っ白になった○○。いったい彼は、今何と言ったのだろうか。
「っ・・・!!」
○○はその場から逃げるように駆け出した。
「ん?」
キッチンのガラスドアの向こうで、何かが横切ったような影を感じたベルトウェイ。何気なくドアを開け、影が消えた方へ眼を向ければ、振り向いた○○の歪んだ顔が見えた。
「○○!!!」
ベルトウェイは慌ててキッチンを後にする。
彼の○○を呼ぶ焦ったような声が聞こえたのか、彼の握っていた携帯電話の受話器からは「言わんこっちゃない・・・」という呆れたような声が発せられた。
「○○〜〜っ!!!」
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