Warmhearted Christmas
「ピアーズさんが好きでした・・・ずっと・・・大好きでした・・・」
○○はピアーズの胸に顔をうずめながら、静かに、それでもはっきりと言った。
その刹那、○○を抱きしめるピアーズの腕の力が強くなり、彼の力強い鼓動が伝わってきた。
「・・・俺だって・・・今日こそ言おうって、決めてたんだぜ・・・」
「・・・・・・え?・・・・・・」
ピアーズのその言葉に○○は驚きを隠せない。
「それ、本当・・・?」
○○はピアーズを見上げた。
「本当」
「だって・・・毛糸、嫌いでしょう?」
「毛糸を嫌いなのが、あんたを嫌いになる理由にならないだろ。それに、毛糸だって好きだ」
「でも、一か月前、すごく真剣な顔で毛糸玉見てたし・・・」
「あの時期で、ダークグリーンの毛糸で手編みって言ったら、『男にあげる』って普通考えるだろ。俺はずっと好きなのに、あんたの心は違うヤツに向いてる。どうしたものかと考えてたんだよ」
「さっきの女の人は・・・?」
「ただの顔見知り」
「でも、ピアーズさん、誰にでも優しいし・・・」
「優しくしてるのは、あんたにだけ。だいいち、とっかえひっかえ女を連れまわす趣味は、俺にはない」
「・・・どうしてここに・・・?」
「あんたがオフィスビルの街頭の所に居るのが見えたんだ。あんたに呼ばれたと思ったら、急に俯いて走り出すから何かと思ったんだよ」
そうだったんだ・・・。あの時、私がピアーズさんを呼んだの、聞こえてたんだ。
○○の涙はいつの間にか止まっていた。
「・・・で?さっきあんたは俺のことを『好きだった』って言ったな。・・・過去形だろ?・・・今は・・・嫌い?」
ピアーズの真剣な眼差しが、まっすぐに○○に向けられた。
過去形で言ったのは、ピアーズには、もう恋人が居ると思ったから。自分の気持ちを伝えてもどうにもならないと思ったから。今だって、さっき以上に大好きだ。
「今までも、これからも、ずっと大好きです!」
○○のその言葉を聞くと、ピアーズは更に強く○○を抱きしめた。
「ピアーズさん、マフラー、貰ってくれますか?」
「断る理由がないだろ」
ピアーズは○○からマフラーを受け取り、そのマフラーを自分と○○の首に巻いた。そして、○○を抱きしめたまま、ピアーズは地面に寝そべった。
どちらからともなく口づけると、二人はいつまでも空から降ってくる雪を見ていた。
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