サンダーソニア
“でも、どうしてこのサンダーソニアを?ランタンなら一緒に作ったのがあるのに”、○○のその言葉に、ハンクはまたコーヒーを一口すする。そして、ゆっくりと口を開くと同時に○○を優しく抱き締めた。
温かいハンクの腕の中。聞える鼓動の音と低い声に、○○はゆっくりと眼を閉じる。
「私は急に入った任務で、お前の傍に居られない。だから、私が帰って来るまでの間、このサンダーソニアでしっかりと自分の身とこの部屋を守れ」
抱き締めたままの状態で、ハンクは続ける。
「見ろよ、このサンダーソニア。一本だけだけど、花はいっぱいついてるだろ?」
サンダーソニアは一輪挿しにうってつけ・・・一本の茎から沢山の花をつけるこの花は、一本でありながら賑わせてくれる。そういう意味で一輪挿しにうってつけなのだろうか。
「この花一つをジャック・オー・ランタン一つに見立てるなら、今ここにあるこの花はランタン何個分の効果なんだろうな」
○○はハンクの腕の中から顔だけを動かすと、テーブルの上のサンダーソニアを見つめた。
「そう考えると・・・悪いおばけは絶対にここには近寄れませんね」
○○は再びハンクに微笑んだ。
「ハンクさん!どうもありがとう!!」
「おばけに連れて行かれるんじゃないぞ!?」
微笑みながら見つめ合う二人。○○は静かに眼を閉じると、ハンクもそれに応えるようにゆっくりと顔を近付けた。
しかし―
「あっ!上部から電話だ!!」
「え!?」
あともう一歩というところで、ハンクの携帯電話にU.S.S.の上部から電話が来てしまったようだ。雰囲気をぶち壊すバイブレーションとその振動音が、黒い携帯電話との相乗効果で、まるで意地の悪い悪魔のようだ。
「サンダーソニアの効果で、こういう時にはU.S.S.のヤツらも近付けないようにして欲しいもんだな・・・」
ハンクは手の中で全身を震わせて笑い声を上げる黒い悪魔を睨み付けた。そして、一時的にその悪魔を黙らせると、勢いよく○○を引き寄せる。
やがて、ゆっくりと離れる互いの唇。
「できるだけ早く帰るからな」
「はい!気を付けて下さいね!」
大好きな恋人、ハンクが帰るまで・・・。○○はサンダーソニアを見て優しく微笑んだ。
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