駅の入口が大きくなってきて、行き交う人が増す。“イタズラ”をするなら、本当にここが最後。
「ピアーズにしたいこと」・・・・・・キスがしたかった。普段は恥ずかしがって自分からできないことでも、「ハロウィンのイタズラ」ならできそうな気がした。彼が忙しいのは十分にわかってる。でも、それでも・・・ほんの1分、いや、30秒でもいいから時間が欲しかった。“改札まで送る”なんて歩いてる間にできてしまうことなのに・・・。
「時間がないんだ。ごめんな」
「ううん・・・大丈夫・・・」
・・・『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ?』なんて言って、かわいくキスしようと思ってた・・・。
『時間がない』なんて・・・ほんのちょっとの“イタズラ”さえもダメなの・・・?
「ごめんな。気を付けて帰ってくれ」
・・・ねぇ、ハロウィンの今日だから何気ないイタズラも『特別』になるんだよ・・・?
「・・・イタズラ、するぅ―」
「ごめんな。わかってくれ。時間がないんだ」
今じゃなきゃダメなのに・・・だって・・・
だって・・・今日が過ぎたら『Trick or Treat!』の魔法も切れちゃうから・・・。
「後でメールするよ!」
「・・・うん・・・」
遅すぎたハロウィン
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