Warmhearted Christmas

 何かが近づいて来る音がする。○○は音のする方を見てみたが、滲む視界と激しくなった雪で何も見えない。

「○○!」

 突然名前を呼ばれ、近づく音が大きく、そして速くなった。街灯の明かりによって、だんだんと人の形が映し出される。○○の座るブランコの周りにある、小さな柵の手前まで来たそれは随分と息を切らしていた。

「○○」

 ○○の目の前に現れたのはピアーズだった。顔を向ければ、自然と目があう。

「・・・何で泣いてんだよ・・・」

「・・・あの女の人は・・・いいんですか・・・?」

 泣いている理由なんて言えない。咄嗟に、○○は質問の答えをはぐらかした。

 ピアーズは目の前の柵を飛び越えると、○○の前に片膝を立ててしゃがんだ。

「質問に答えろよ。何で泣いてんだ」

 ピアーズは○○の頬に手を伸ばし、そっと涙に触れた。そして、彼のほんの少しだけ色素の薄いブラウンの双眼が、しっかりと○○を捉えた。

 ○○は困った顔をピアーズに向ける。

「・・・言って・・・?」

 涙を流し続ける○○にピアーズは優しい目を向ける。そんな目をされたら、嘘なんてつけない。

「・・・好きな人に告白しようと・・・でも、その人にはもう恋人が居たんです・・・それを知らなくて・・・」

 しゃくり上げながら○○は答えた。 

 ピアーズは○○の膝の上のマフラーに視線を落とす。そして、○○が言わんとしていることがわかったかのように頷く。

「おいで・・・」

 ピアーズは○○を優しく引き寄せた。

 やめて・・・。そんなことしないで。また勘違いしちゃうじゃない。・・・その優しさが、自分だけに向けられているものだと・・・。

「・・・全部なかったことにする気かよ?そいつへの気持ちも・・・」

 ピアーズは静かに口を開いた。

 ・・・・・・言える訳がない。でも・・・。自分の大好きな人、ピアーズへの気持ちは消せない・・・。

「ピアーズさんが好きでした。ずっと・・・大好きでした・・・」


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