ラクーンの同窓会(ver.Christmas)

 大きなテーブルには、二人きりではとても食べきれない程のごちそうが並べられていた。ケーキ、シャンパン、ワイン、チキン、柿の種、その他・・・これは、レオンがスーパーで大量に買ってきた物であった。

「ううう・・・何でみんな来てくれないんだ・・・」

 散々シャンパンやワインを飲んだレオンが、テーブルに額を付けながら呟いている。

「私も来なきゃよかった!!」

 最終的に一人は来ているというのに、全く嬉しそうな顔をしないレオンに腹を立てる○○。最初からみんなが来ないと知っていれば、自分も来なかっただろう。

「何で俺はもてないんだ・・・」

 切り分けたケーキのイチゴを指先でちょんちょんと突きながら、女性にもてないことをぼやくレオン。

「“何でもてない”って・・・恰好つけだし、すぐポーズとろうとするからでしょ!」

 「ナルシストだし!」と付け加えて、○○はレオンを睨み付ける。普通にしてて恰好いい、そんな男性が居たら、女性は放っておかないだろう。ナルシストがもてるとは訊いた例がない。

「・・・うっ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・ふぇっ・・・」

 テーブルに額を付けた状態で、つい先程まで弄んでいたイチゴを一口齧ると、レオンは遂に泣き出してしまった。

「えぇいっ!泣くんじゃないっ!いい年した男が!!!」

 ○○はついに我慢できなくなり、レオンの服の襟を掴むとその場で思い切り揺する。

「・・・だってぇ・・・」

「いい加減にしなさいっ!」

 レオンの襟を掴んだまま、○○は彼の頬を思い切り引っ叩いた。

「あんた何独りでブツブツ愚痴ってんのよ!!ここに一人、来てる人が居るんだよ!?わかってんの!?愚痴ならちゃんと目の前の相手に愚痴ればいいじゃない!!クリスマスに独りでいるのが辛くて同窓会を開いたなら、ちゃんと同窓会しなさいよ!!」

 しょうがなくて、仕方なくて1人レオンの横に居るのに、それを誰も居ないかのように扱われるなど、失礼極まりない。

「・・・○○・・・」

 レオンは涙を拭うと、○○を見つめた。

「・・・俺の話・・・聞いてくれるか・・・!?」

「さっきから聞かされてるんですけど!」

「・・・うっ・・・ごめん・・・」

「わかったから!ほら!早く愚痴りなさいよ!聞いてあげるから!」

「・・・実はな・・・」

 こうして、同窓会は約1時間遅れで始まった。

 この二人の関係は、ここからスタート・・・するのかもしれない。


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