ラクーンの同窓会(ver.Christmas)
部屋に入るとまず、中央から大きく敷かれた絨毯が目に入ってきた。ワインレッドの上品な色を基調とした毛足のある絨毯で、沢山の模様が入っている。
そして、そのまま絨毯から壁の方に眼を移すと、なんと暖炉が燃えている。かわいらしいレンガ造りの本格的な暖炉だ。
「うわぁ・・・すごい・・・!」
単純に、暖炉に対しての「すごい」という意味と、マンションの一室でよく建築許可が下りたということに対しての「すごい」という意味を、一つの「すごい」で表す○○。他には何かないかと、そのまま部屋の中を見て回る。すると、金の額に納められた大きな絵が飛び込んできた。三色の羽が付いた黒っぽい大きな帽子に、右肩にはカラス。その右肩から腰の左に向かってかけられた大きなベルトに、膝丈まである赤い上着。茶色のズボンに、同系色の膝下で折り返されたブーツ。その恰好はまさに海賊である。背景は、どこかの水辺であるが、朝日が昇ろうとしていて美しい。そして、その海賊は一体・・・・・・?
「うわぁ・・・レオンだよ・・・」
よく見ると、その海賊の顔は髭の濃いレオンで、食料が尽きて悲惨な海賊が何か食べられる物を求めて岸をさまよっているかのように描かれている。
「ねぇ、レオン・・・この絵、何・・・?」
○○が貧しい海賊の端くれのような顔で訊くと、彼は顎に手を当て、やたら落ち着いたようにポーズとって答えた。
「この前ヘレナと行った任務の時のだ!ハニガンに衛星写真で撮ってもらって引き伸ばしたんだ!格好いいだろう!!!」
任務中に何をしているのだろうか。それに、自分の写真を“恰好いい”などと言って引き伸ばして部屋に飾るなんて、ナルシストも甚だしい。それに、大して、いや、全く恰好よくない写真をである。
○○がレオンを横目で見つめていると、彼は暖炉に肘をかけ、再びポーズをとって何やら話し出す。
「うわぁ・・・すごい・・・」
この“すごい”とは、『よくぞまぁ、こんなことができるな』という、憐みにも軽蔑にも似た“すごい”である。○○は改めて、彼が何かとポーズをとったり恰好つけるところが好きではないと感じた。
そんな○○の気持ちを知る訳もなく、“すごい”という発言を肯定的な意味に捉えたレオンが得意げな顔をする。
「どうだ!?俺の部屋!すごいだろう!!!」
部屋の中をもう一度見渡すと、自画像の他にも恰好つけな家具や、女性にもてそうな小物多くが見つかった。先程見た絨毯と暖炉も、そうやらその類のようである。
目の前で満面の笑みを作るレオンに、○○の中には再び嫌悪感が走る。しかし、その嫌悪感を○○の携帯電話の着信音が破った。
「あっ!もしもし!?デボちゃん!?」
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