The Starry Skies In December

「クリス・・・!それ・・・!」

クリスの動作をずっと見つめていた○○。外された白い布によって現れた物に、驚いたような声を上げた。

 テーブルの上には二つのグラスと、シャンパンクーラーが置かれていた。氷の入ったその容器の中には、クリスマスに相応しいラベルの付いたシャンパンが入っていて、冬の外気によってより一層冷やされていた。

「12月の星空がお前は大好きだったよな。デートの帰りにはいつも、星のよく見える丘に二人で登ったよな」

 容器からシャンパンを取り出すと、クリスはそれを○○へと見せる。

「クリス・・・!!このシャンパン・・・!!」

 ○○は何かを発見したかのように嬉しそうな声を上げると、クリスを見つめた。先程、布が外された時にシャンパンが見えた時、「もしかして」と思った○○。クリスマスらしい緑色のボトルに、暗闇でも一目を引くようなキラキラとした金色のラベル。それは○○のよく知っている物だった。そう、そのシャンパンは、クリスマスの時期になるといつもクリスと一緒に飲でいた物だった。

「あぁ!あのシャンパンだ!クリスマスは多少前後しても、毎年飲んでるよな!・・・本当は今日・・・あの丘に一緒に行きたかったんだ。でも・・・パーティーになってしまったからな・・・」

「クリス・・・」

 クリスの言葉で○○は思い出した。ここ何年か、クリスマス当日には予定を入れていなかったことを。

「○○・・・お前はいつも俺に予定を合わせてくれてたんだよな。・・・すまなかったな」

 苦笑するクリスに、○○は首を横に振る。確かに、クリスマス当日には一緒に居られなかったかもしれない。しかし、別の日に一緒にクリスマスのお祝いをしたことに変わりはない。『特別な日だから、その日を大切にしたい』ということよりも、○○にはもっと大切なことがあった。

「私、クリスが居てくれるだけでいい!無事に帰って来てくれるだけで十分!」

 大切な人が傍に居てくれる・・・これ以上何を望むことがあるのか。ある訳がない。

「ありがとうな、○○・・・どうしても今日、礼が言いたくて・・・どうしてもここから一緒に星を見たくて・・・実はこの時間を作るためにピアーズには寝たふりをしてもらったんだ」

 本当は、丘に登ることを考えていたクリス。しかし、パーティーでそれは叶わなくなってしまった。ならば、このバルコニーから星を見ようと考えた。大切な人が居て、自分の帰りを待っていてくれるこの場所で。

「えっ!ピアーズさん、寝たふりしてたの!?」

 ○○は、先程のテーブルを拭いたままの姿勢のピアーズを思い出した。あの時は、あのタイミングで眠ってしまったのかと驚いたが、真実がわかった今、それは笑いに変わった。

「あぁ。もう元に戻って後片付けの再開をしてるさ」

 クリスは「マルコとフィンは寝るのは予測できたんだが、ピアーズは寝ないからな・・・」と付け足すと、シャンパンのコルクを抜き、ゆっくりとグラスに注いだ。

 ○○とクリス。二人はどちらからともなく微笑んだ。

「だから・・・二人だけの乾杯、してくれるか?」

「うんっ!!」

 二つのグラスが合わさる軽快な音が、静かな星空に響いた。




 シャンパンを飲みながら二人して星を眺めていると、徐にクリスが口を開いた。

「なぁ、○○。北極星あるだろ?ほら、あの話だ」

 
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