「男の人の好きな部位ってどこ！？」なんて質問には、みんなは何て答えるのだろうか。

　○○はつい先日親友の△△と飲んだ時の会話を思い出していた。好きな人（恋人）であるベクターの家に遊びに来ていた○○。トイレから戻ると、一旦は視界から消えた好きな人が再び視界に入り、冒頭の言葉を思い出したのだ。

　――ねぇ、○○！○○って男の人の好きな部位ってどこ！？――

　――パーツ？だよね？それって、一般的な男性のパーツってこと？ほら、筋肉とかってよく言うじゃない？それとも好きな人ってこと？？――

　一般的な男性、つまり、単純な「異性」なのか、それとも「好きな人」なのか。それによって質問の答えは大分変わってくるはずだ。変わらない回答もあり、その王道としては、鎖骨・（折り上げられたワイシャツから見える）腕の筋肉・首筋・浮き出た血管・骨ばった手などが挙げられるのだが。

　――好きな人でもいいし、一般的な男の人でもどっちでも！！――

　何の話からこのような話になったのかはわからないが、酒もそこそこに盛り上がっていたのは確かだった。

　――ねぇ、○○はどこの部位が好き！？――

　――えぇと、そうだな〜――


「ベクター〜」

　トイレから戻った○○は、ソファーに座るベクターの膝の上に、ちょこんと顎を乗せた。テレビのチャンネルを変えたベクターが○○の方へゆっくりと視線を落とし、自然と○○がベクターを見上げ、ベクターが○○を見下ろす体勢になる。彼の眼が下を向き、いつもは一重にしか見えない彼の眼から奥二重の線が顔を覗かせた。

　この奥二重の線の見え隠れが好きなのって変かな……？普通にしてると見えないんだけど、下向いた時に見えるのって恰好いいんだよね……。

　○○はベクターの眼（奥二重）が好きだった。「眼元」とも言うべきなのか。

　いつもは見えない二重の線が、下を向いた時、伏し目がちになった時にだけ見える。

「ベクター、ちょっと……」

　○○は徐に手を伸ばし、ベクターの顔に触れた。