「――で、どうだ?気分は」
そう言って再び○○を見つめるハンク。その表情には冷たさは感じられない。しかし、「呆れ」という表情が感じられる。
「前にも注意したよな?こういう時は、酒を飲んだり、刺身とか卵焼きを食べるのを止めろって」
「……だって……」
「だってもこうもない!!!」
何かを言いかけた○○に、ハンクはピシャリと言い放つ。
何を隠そう、○○はまた蕁麻疹が出てしまったのだ。
ことの成行きを説明しよう。
―今から2時間程前―
今日は金曜日の夜だった。翌日は休みということで、友達と夕食を食べて帰宅した○○は、体に痒みを感じていた。腕を見ると、幾つかポツン・ポツンと赤く膨れたような物ができていた。○○は蕁麻疹が出やすい体質のため、こういう場合は下手な物を食べずに身体を休め、寝てしまうのが鉄則だった。(もちろん恋人のハンクからも、こういう時だけは食べるのを我慢しろと言われている。特に○○の好きな卵焼きや、蕁麻疹の大敵である食べ物)しかし、友達との夕食が楽しかったせいか、「蕁麻疹かもしれない」という危機感を忘れ、缶チューハイに手を付けてしまったのだ!そして、スーパーのすぐに食べられる卵焼きに、買ってきた刺身盛り、挙句の果てにケーキにまで手を付けてしまったのだ!この時ちょうどハンクは風呂に入っている最中で、15分程後に彼が出て来た時には、○○は既に悲惨なことになっていた。「夕食を外で食べて来たくせに、よくぞまあ帰ってからもそんなに食えるな」という意味の「すごい」をハンクは感じたが、それと同時に別の「すごい」も感じてしまったのだ。それが、「ポツン・ポツン」という表現の蕁麻疹ではなく、全身に噴出した蕁麻疹だったのだ。
「どうしよう……ハンク……!」
「食うのを止めてさっさと寝ろ」
「痒くて寝られないよ!!」
「知らん!!」
この時既に、ハンクは呆れ顔だった。前に注意したにも関わらず、食べたい物を食べたいだけ食べ、ヘラヘラしていた結果だ。ハンクからしてみれば前回と同様に「自業自得」の四文字だった。
「痒いよぉ〜!!!」
「叩いたり、膨れた所に爪を立ててみるのはどうだ?」
蚊に刺された時に、その部分を叩いたり、爪を立てて「×」の痕を付けたりして痒さを軽減……と言うか、忘れようとしたことはないだろうか。
「じゃあ、ハンクやって!!」
「自分でやれ」
「やだ!!!だって自分でやると手加減しちゃうもん!!!」
この時、○○は忘れていた。ハンクがアンブレラの兵士であり、そんじょそこらの男共よりも強いということを。
「ハンク、お願いっ!!!」
○○はそう言うと、服を脱ぎ出す。
「おい!なぜ服を脱ぐ!!」
○○の行動にびっくりしたハンク。
「叩くだけなら脱ぐ必要ないだろう!!着てろ!!バカ!!」
次から次へと服を脱ぐ○○に、ハンクは慌てて制止の声を張り上げる。
「やだ!!だって暑いもん!!それに、服あると痛くないし!!」
この時、○○は酔っていた。露になった○○の身体は酒のせいで更に赤かった。そして、どういう訳か下着も脱ぎ棄てベッドの上に四つん這いになった○○。
「おい、バカ――」
アルコールのせいで身体が暑いのは仕方ない。服を着ていると、叩かれたり爪を立てられた時のダメージが軽減されるということもわからなくはない。しかし――。
「下着を脱ぐ必要も、四つん這いになる必要もないだろう……!!!」
「私が立ってちゃ、できないでしょっ!!」
痒さと火照りに耐える○○。そんな彼女に向かって、ハンクは下着を放り投げる。
「下着だけは付けてろ!そういう行為は別の時にする。それに、そういう行為でも『女を叩く』趣味は私にない!!!」
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