星空に、それに負けないくらいの様々な色の花火が現れては消える。消えたかと思えばもう一度花開く物。枝垂れ柳のように散ってだんだんと消えていく物。散った花火がきらきらと輝く物。

 先程の楽しい懐古話は終わり、二人して花火に夢中になっていた。そんな中、ピアーズの手に触れる物があった。

「・・・ピーちゃん・・・」

 ○○の手だった。

「ん?どうした?」

 ピアーズは○○を見つめるも、○○は言葉を発しない。寂しそうに俯いているように見えるのが、ピアーズには心配だった。

 話かける代わりに、○○の手に触れているのとは逆の手で彼女の頭に触れる。

 無理に訊かない方がいい、ピアーズはそう思った。

 ○○が時折見せる寂しそうな顔はきっと何かあるのだろう。時計を見てああいう顔をするといえば、もしかしたら時間が進むのが嫌なのかもしれない。○○も自分と同じ時期に夏休みを取っていたはず。そうだとすれば、きっと残りの休みが少なくなってきて、会社のことを考えて鬱になっているに違いない。沢山ある連休の後の仕事とは、誰もがそういう感情になる物だ。そして、『ベランダから部屋に来ることを最近していない』と言った。その発言には『したくてもできない』という意味が含まれている。それは、自分が故郷を離れているからという意味ではなく、『そんな風にして発散することを、最近していない』という意味なのだろう。昔、○○がベランダから来た時には、悩み事や愚痴も付き物だった。それと、現れては散っていく花火を見ていれば、何となく寂しいような感情や感傷的になってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 ピアーズは、そんなことを考えていた。

 ピアーズは○○の頭に触れた手を軽く動かした。

「無理、すんなって」

 返事をするように微かに動く○○の頭。

「話、いつだって聴いてやるから」


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