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「おい!!やめろよ!!彼女、嫌がってるだろ!!!」
一瞬で静まり返るカフェテリア。声のした方に顔を向ければ、○○の正面に位置する、上の階の廊下からだった。廊下の手摺りから睨み付けるその声の主は青年のようで、○○はその顔に見覚えがあるような気がした。
○○を取り囲む男たちの注意が○○ではなく自分に向いたのがわかると、青年は小走りに階段を下りて近付いて来る。
だんだんと近くなる青年。○○はその青年を見て驚いた表情を作る。
「俺の連れだ!!」
青年は○○の腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せ、背に隠した。
その青年は、つい先程まで○○が持っていたクリップボードに添付された写真の男と同一人物だった。こちらを睨んでいた青年の顔は写真を見て感じた「性格きつそうな顔」と同じだった。そう、○○が探していた人物、ピアーズ・二ヴァンスだったのだ。
○○がただ彼の顔をじっと見つめていると、いつの間にか、取り囲んでいた男たちがカフェテリアを出て行こうとしていた。○○が気が付かなかっただけで、彼は男たちと一言二言交わしたようだった。
「あの・・・ピアーズ・二ヴァンスさんでいらっしゃいますよね?・・・ありがとうござ―」
「いや―」
○○は礼を言おうとしたが、彼に眼を逸らされてしまった。
「送るよ」
眼を逸らしたまま、彼は言う。
「え?」
「この船、広いから迷うだろ」
その後、○○は小包を渡し終え、ピアーズに適当な場所まで送ってもらった。少し会話をしたのだが、何だかよく覚えていなかった。すぐ傍でピアーズの顔を見れば、彼に出会うまで「性格きつそうな顔」と感じていたのに、今では「意志の強そうな顔」に、そして、「恰好いい」に変わっていた。
これはある夏のことだった。
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