一目惚れは船上で

 それはある夏のことだった。

「え〜と・・・ピアーズ・二ヴァンス・・・アルファチームかぁ・・・」

 ○○は船内の廊下を歩きながら、クリップボードにあるピアーズ・二ヴァンスに関する所属情報と、添付された顔写真を交互に見つめていた。

「客室は・・・9630と・・・え?部屋数ってこんなにあるの!?・・・・・・しっかし、性格きつそうな顔した人だな〜」

 ○○は自分の脇に抱えた小包から、彼の顔写真を再び見つめた。そう、抱えている小包は彼宛てで、それを事務員の○○が届けることになったのである。しかし、BSAAでも有名なピアーズ・二ヴァンスのことを○○は何も知らない。それもそのはず。なにせ、○○は今日がBSAAの事務員として赴任して初めての日だからである。

「しかし何でこんなに大きな船・・・」

 初めての勤務はBSAAオフィスでの仕事ではなかった。大きな豪華客船にBSAA全員が乗り、どこかへ行くらしい。(もちろん一般客も居る)目的も何も聞いていない○○は、これから共に仕事をしていくであろう仲間に挨拶をするので精一杯だった。唯一聞いていたことと言えば、この豪華客船はクイーン・ゼノビアという名前ということだった。




 広い豪華客船クイーン・ゼノビアをさまよって暫く経った頃だった。

「9630って、やっぱり9階?・・・あっ!!」

 エレベーターを見つけて嬉しそうな表情を作る○○。しかし、その表情はすぐにまた残念そうな物に変わってしまう。

「あれ・・・?ダメだ・・・直通だ・・・」

 どうやら、どこどこへ直通のエレベーターらしく、各階には止まらないようだ。同じような作りと広い船内のため、迷ってしまった○○。

「階段を探すか・・・」

 ため息をつき、再び元来た廊下を戻る。そして、先程とは違う方へ伸びる廊下へと進んで行く。目的地は疎か、道を見つけるのに一苦労である。


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