お前が眠りについても
疲れたから先に寝ると言いベッドに入った○○。しかし、寝付けずに目は冴えたまま。羊を数えても、気の遠くなるような昔を思い出しても、どうやっても眠ることはできなかった。
付けっ放しにしてあったすぐ脇のランプは、いつの間にか点滅している。ベッドに入った時は暖かな光を灯していたというのに。
独りで居たくない。
これが「不安」という物なのか・・・それもよくわからない。この気持ちをどのように表現すればいいのかもわからない。
寝室の扉を少し開けば、真夜中であるというのに未だリビングでテレビを見ているジェイクの笑い声が聞こえる。
○○は彼の元へと、冷たい廊下をぺたぺたと歩く。
「ジェイク・・・」
「あん?どうした?」
○○が呼べば、ジェイクは大して驚いていないようで、いつもと同じ瞳をこちらに向けてくる。
澄み切った彼の青い瞳。
「ジェ、イク・・・っ・・・」
そんな彼の瞳に吸い込まれるかのように、○○の瞳からは大粒の涙が零れ出た。
「っおいっ!!ど、どうしたんだよ!?」
ジェイクは、今度は酷く驚いた顔をする。大慌てでソファーから腰を上げ、○○の元へと駆け寄ろうとした。しかし、ジェイクがそうするよりも先に、○○はジェイクの腕の中へと飛び込んだ。
「ジェイ・・・ク・・・」
彼のスウェットを両手でぎゅっと掴み、顔を押し付ける○○。震える声で彼の名を呼ぶ。
次から次へと溢れる涙。
自分でもよくわからない。どうしてこんなに独りで居たくないんだか。
自分でも全然わからない。どうしてこんなに涙が出るんだか。
何もわからない。これが「不安」という物なのかさえも。この気持ちをどのように表現すればいいのかも。
「・・・っ・・・ジェイク・・・」
ただ彼の腕の中でこうしていたかった。
「お前が眠りにつくまで、傍に居てやるから」
ジェイクは壊れ物でも扱うかのように、そっと○○を抱き締める。
「お前が眠りについても、傍に居てやるから」
「・・・うん・・・」
再びソファーに座るジェイクの脚の間で、○○はもぞもぞと丸くなる。つい先程と同じように、顔は彼の胸に押しつけたまま、全てを預けるかのように凭れた。
互いの体温が重なってか、少しずつ瞼が重たくなってきた。テレビの音も気にならない程心地よいそれは、ゆっくりと○○を眠りへと導いていく。
そんな○○を見て、ジェイクはそっと微笑んだ。
「おやすみ・・・」
やがて、○○を追いかけるようにしてジェイクも静かに眠りへとついた。
寝室で付けっ放しにしてあったランプは点滅から元へと戻り、再び暖かな光を灯し始めた。
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