横無尽に突っ走れ!

 “新生活だから”、その言葉に、そういやそうだったとジェイクは思い出す。○○は4月から新生活だったと。

「・・・そうだったな。すまねぇ」

 悪かったなと、何ともすまなそうな顔をするジェイク。ゆっくりと○○に近付き、短くなった髪にそっと触れた。

「似合ってんじゃねぇか。その長さも」

「本当!?ありがとう!」

 そう言って微笑む○○は、嬉しそうな、寂しそうなで。

「でも、ちょっともったいねぇな」

「あそこまで長いのは似付かわしくないよ。それに、もうそろそろ切りたかったから・・・!またすぐに伸びるしね!」

 髪を手に取り、その長さを見つめる○○。そう言ってジェイクに笑顔を見せる彼女は、やっぱりどこか楽しそうで、やっぱりどこか不安そうで。

「大丈夫か?」

 ジェイクは○○の髪に触れたまま、目線を合わせるように屈んだ。

「うんっ!大丈夫っ!!」

 そんなジェイクに向けて、○○はこれでもかと言う程に笑ってみせた。

 心配や不安がないと言えば嘘になる。しかし、まだ足を踏み入れたことのない未知の世界、この目に映したことのないこれからの世界。そんな世界を、知る前から心配してもしょうがない。そんなことは、始まってそう感じたらすればいい。自分が自分でなくなる訳じゃない。

 今まで知らなかったことを、これから知ることができるのだ。寧ろ楽しみで嬉しいはず。

 自分らしく、笑顔で行けばいい。

「○○」

「ん?」

 自分を呼ぶジェイクの声に、○○は彼の目を見つめた。

「○○、縦横無尽に突っ走れ!!おめぇがキツくなったら、倒れそうになったら、でっけぇそのケツ、俺が支えてやっからよ!」

 ジェイクは歯を見せてニッと笑うと、○○の尻を軽く叩いた。

「ジェイクじゃないんだから!無鉄砲なことはしないよ〜!・・・でも」

 叩かれた尻からジェイクに視線を戻す○○。今までで一番の笑顔を彼に向けた。

「ありがとう、ジェイク!!突っ走るね!!」


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