ダブル・フンコロガシの予感
“朝飯食ってからでもいいか?”と嘘をつき、○○を見ることを再開したピアーズ。力士が張り手をするような恰好で雪を転がして大きくしていく様子は、年頃の乙女らしからぬ姿であった。
ピアーズは携帯を取り出し、カメラのムービーを起動させた。少しズームアップして映したその光景は、画面の中できれいに動いている。ピアーズが画面を凝視していると、突然、○○が転んだ。雪を転がす両手が滑って外れ、そのまま○○は顔から雪に突っ込んでいる。
「ぶはぁっ!!!」
ピアーズはついに、カップの中のコーヒーを周りに飛び散らせた。窓枠をバシバシと叩き腹を抱えている。
頭を振りながら起き上った○○。上半身だけを起こし、何かを探すようにきょろきょろした後、嬉しそうに笑った。たった今転ぶまで作っていた雪の玉を、その前まで転がしていた大きい雪の玉の上に乗せる。
「雪だるまか」
“まぁ、定番だな”と思うも、ピアーズは○○を見守る。すると、○○は雪だるまの額付近に雪を盛り始めた。しかし、○○の立つ位置で雪だるまの下の方しか、ピアーズは見えなくなってしまい、何をしているのかよくわからない。時に顔を傾けたり、覗き込むように雪だるまを見る○○。そして、○○は自分のしているマフラーと手袋を外した。それらを雪だるまに付けると、少し後ろに下がって携帯を取り出す。
「ん?」
再び鳴るピアーズの携帯。電話ではなく、メールを伝える音がピアーズの耳に響いた。
○○を見ながら携帯のメールを開いたピアーズ。そのメールに温かな笑みが零れた。
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