フィン・マコーレーの初恋
「申し訳ございません!お待たせしまし―!?」
応接室に入ったフィンは、その光景に目を見開いた。そこに居た人物、クリスの言った「お客さん」とは、何日か前にフィンが助けた女だったのだ。
「・・・あの・・・フィン・マコーレーさんでいらっしゃいますよね・・・?」
女はゆっくりとフィンに近寄った。
「私・・・●●○○と申します。すみません、お仕事先に押し掛けて・・・。でも、どうしてもお礼を申したくて・・・。マコーレーさんが、受け止めて下さったのを覚えているんです」
フィンが抱き留めた時、微かに開いた彼女の目。あの時、彼女の目にはしっかりとフィンの顔が映っていたのだ。
病室で目を覚ました後、医師がフィンの名と勤め先を教えてくれたのだと○○は言った。そう言えば、肘らへんの擦り傷を消毒してもらいながら、少し話をしたなとフィンは思い出す。
「命を救って頂いて、本当にありがとうございました!」
○○は勢いよく頭を下げた。
「・・・そんな・・・お礼なんて・・・あなたが無事で、元気そうでなによりです・・・!」
フィンは○○に笑顔を向けた。“元気そうでよかった”と心から思った。
「・・・マコーレーさんが助けて下さったから、すぐに退院できたんです。もうすっかり元気です!」
窓から入ってきた風が二人の頬を優しくなでた。
○○は風でなびく自分の髪を耳にかけながら、フィンに向かって元気いっぱいに笑った。
・・・わ・・・ぁ・・・!
○○のその笑った顔に、フィンは目がはなせなかった。
「今度、ちゃんとお礼をさせて下さい!・・・それから・・・」
○○はフィンの腕にゆっくりと自分の手を伸ばした。腕捲りをしていたフィン。彼女の指先にあるのは、フィンの肘らへんの擦り傷。絆創膏も貼っていないその傷にそっと触れる。
「今は・・・こんなことくらいしかできませんが・・・せめてその傷は、私に拭わせて下さい・・・!」
「・・・隊長」
BSAAオフィスに戻ったフィン。クリスの姿を見つけると、ゆっくりと近づいた。
「フィン、さっきの女性から全て聞いたぞ。よくやったな!」
フィンに「お客さんが来た」と伝える前から、○○から全て聞いていたクリス。
クリスは優しく笑い、フィンの肩を再び叩いた。
「隊長・・・」
フィンは自分の肘を見つめた。○○が貼ってくれた絆創膏にそっと触れる。
「隊長・・・!自分は・・・!心から守りたい人ができました・・・!」
フィンは、ほんのりと頬を赤く染めた。
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