丈夫だ

「さあ、できたぞ」

 ハンクの言葉に、○○は顔を上げる。

 夕飯を作ってくれたハンク。彼を目で追えば、○○が座っているソファーの前にあるテーブルに皿を並べている。○○はソファーとテーブルの間の座り、傍にある膝掛けを引き寄せた。

「冷えるぞ」

 ストーブとホットカーペットでもう既に温かいのに、最近の極寒のせいか、ハンクは○○の体を気遣い、自分の膝掛けを○○の体に掛けた。

「ありがとう」

 そう言い、ハンクの方を見た○○。○○の瞳は不安の色を宿していた。大好きな人がすぐ傍に居るのに不安になる。相手が大好きな人だからこそ不安になるのかもしれないが。ハンクの横顔に、笑顔に、先程の労りの言葉に、触れることも抱き締めることもできる、すぐ傍に居る大好きな人に、○○は言いようのない不安を隠しきれなかった。

 どうしよう・・・私・・・。

 ○○は自分の腹を見つめた。少し大きくなった自分の腹。

「大丈夫だ」

 ○○のすぐ横でハンクの声がした。低く、落ち着きのあるその声。ハンクは○○の腹にそっと触れた。

「大丈夫だ」

 ハンクはもう片方の手で、○○の背中をさする。

「悩むと余計によくないぞ」

「・・・・・・うん・・・・・・」

 “大丈夫”と自分に言い聞かせても、どうしても首を縦に振れない○○が居た。


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