んみつ

 ○○とベクターが入るコタツには、二人分のあんみつが置かれている。ベクターが静かにお茶を湯呑につぎ、○○はそれを見つめる。

「美味しそう!」

 ○○があんみつを食べようとした。

「待った!!!まだだ!」

 急に入ったベクターの制止に、○○は口の前まで持ってきていたスプーンを止める。開いた口のまま「へ?」とベクターを見つめた。

「お前と一緒にあんみつを食うんだ。これがなきゃ始まらん」

 ベクターはそう言うと、先程、○○が買ってきたバニラと抹茶のカップアイスとあんこの缶詰を開けた。ディッシャーでそれらをとり、○○と自分のあんみつの上にポンと乗せる。

「わぁ〜!!」

 ○○の目には、先程のあんみつよりも豪華なあんみつが映る。ごく普通のあんみつの上に、バニラ・抹茶・あんこが乗った、ベクターと一緒に食べる甘さの増したあんみつ。

「さっ、食えよ」

「ベクター、ありがとう!!」

 嬉しそうにあんみつを食べ始める○○を、ベクターもあんみつを食べながら見つめた。

「ん〜っ美味しい!!」

 幸せそうな○○を見て、ベクターは静かに笑った。

「ん?どうしたの?」

「いや、本当に幸せそうに食うな〜と思って」

「だって、すっごく美味しいんだもん!!」

「そうか」

「でもね・・・」

 ○○はバニラアイスを食べようとするベクターをじっと見つめた。

「何よりも、ベクターと一緒に過ごす時間が一番幸せ!」

「ぶっ!!!ぶぉはっ!!!!」

 急な○○の発言に、寒天とアイスをふき出したベクター。予想しなかった展開だ。

「ちょっと!ベクター何やってるの!?」

「・・・いや、しょっぱいものが食いたくなってな・・・」

 コタツの上にふき出した寒天とアイスを、台布巾で拭こうともせずにベクターは立ち上がる。

「ベクター?どこ行くの?」

「煎餅だ!戸棚の中にあっただろう!」

「あんみつは?食べないの!?」

「食うよ!」



 ・・・ったく・・・甘くなりすぎちまったじゃねぇか。
 

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