二年越しの

 あの日から、ベクターは喫茶店で○○と出遭うことが多くなった。互いに約束はしていない。連絡先もしらない。ベクターが店に居て彼女が居ない日もあれば、その逆もある。しかし、店で出遭う度に二人は話に花を咲かせた。英語で、時には日本語で。

 そうやって過ごしていると、いつしか喫茶店で話をするのが楽しみになっていた。

「今日は仕事でこんなことがあったんですよ」

 季節は春から夏に変わり、

「アイスティーでいいか?」

「ベクターさんは?」

「俺はアイスコーヒーだ」

 夏真っ盛りを迎えた。

 楽しみだった喫茶店での会話は、日課になりつつあり、

「最近涼しくなったな」

 季節は夏から秋を迎えた。

「最近、英語が上達した気がします!!」

「“気”だけか?」

 秋から冬になり、互いに笑い合うこの時間がいつしか安らぎと癒しに変わっていた。

 しかし、それと同時にベクターは焦りを感じていた。ずっとこうして過ごすことはできないということ。そして、気付いてしまった己の感情。

「ベクターさん」

 冬のある日、寂しそうな○○の声。

「私・・・日本に・・・」

 言いたいことは嫌でもわかる。

 季節は冬のまま。

 今までのように、二人で新しい季節を迎えることは叶わない。


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