二年越しの

 公園で○○と出会ってから一週間程経ったある日、ベクターは再び彼女を見つけた。ベクターが家路の途中にある、普段からよく利用している喫茶店を通り過ぎようとすると、窓側のテーブルに○○が居るのが見えた。

 テーブルの上には紅茶と何冊かの英語の書物。その書物と睨み合っては、○○は辞書を引き、必死にペンを走らせていた。

 そんな彼女を見て、ベクターはふっと笑みを浮かべる。あの時のことは心配なさそうだと。

―ベクターさん!

 止めていた足を再び動かそうとすると、窓ガラス越しに声が聞こえた。○○がこちらに気付き驚いたような、それでいて嬉しそうな顔をしている。

「You labor on English huh?」

「え〜と・・・」

 店内に入り○○の居るテーブルの椅子を引くと、ベクターは静かに笑った。

「精が出るな」

「あ・・あぁ!!」

 先程のベクターの言葉の意味がわかった○○。テーブルに広げられた英語の書物を見て照れたように笑った。

「あ、あのっ・・・この前は、本当にありがとうございました!」

「いいって。その分だと大丈夫なようだな」

 その場で姿勢を正し勢いよく頭を下げた○○に、ベクターは知らず識らずのうちに優しい眼を向けていた。

「だが、気を付けろよ。ここじゃ、ああいう輩はそこらへんにゴロゴロ居るからな」

「はいっ!」

 しっかりと返事をして○○は笑った。

 これが、ベクターが見た初めての○○の笑顔だった。

「ベクターさん、ここの部分の英語がよくわからないんですが・・・」

「どれ、貸してみろ」


[ back to top ]

- 5 -

[*前] | [次#]
[ Main ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -