二年越しの

「・・・フン。全く・・・」

 女を取り囲んでいた数人の男を蹴散らし、その男らが逃げて行くのを確認すると、ベクターは視線を女へと移した。

 女は尻餅をついて、今にも溢れそうな涙を目に浮かべ、ベクターを見上げていた。

 面倒くさいことこの上ないと忌々しく思いながらも、ベクターは女に向かって手を差し出した。

「Are you all right?」

 震える女の小さな手が、ベクターの手を握る。それをしっかりと確認すると、ベクターは女の背中にもう片方の手を添え、そっと立ち上がらせた。

「・・・あ、ありがとうござ・・・」

 そこまで言うと、女は遂に泣き出してしまった。

 人目に付く公園のど真ん中でこのように泣かれるなど、この上なく面倒で迷惑である。しかし、彼女が日本語を喋ったからか、同じ故郷の香りを感じたからか、どういう訳かわからないが、ベクターは、いつまでも自分の手を握ったまま肩を震わせて泣く女を引き剥がす気にはなれなかった。

「・・・もう大丈夫だ・・・」

 ベクターが女の背中をさすると、鼻を啜りながら女は頷いた。

 これが○○との出会いだった。


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