二年越しの

「二年か・・・」

 寝室のベッドの上で、ベクターは窓の外に広がる空を見つめた。春の陽気に包まれた、雲一つない青い空。彼女と出会ったのも、こんな日だったと思い出す。

 いや、“思い出す”という表現は正しくない。ベクターは彼女のことを思い出すことなどない程、片時も忘れなかったのだから。

 ベクターは、頭の下に置いていた掌を元に戻すと、ぼぅっとその掌を眺めた。

 最後の最後に彼女を抱き締めた掌。今でも忘れないその感触。

 そんなことを想っているうちに、掌を見つめる視界の遠くに時計が見えた。その時計へと焦点を合わせれば、時刻はU.S.S.へと赴く少し前を示している。

 そろそろ家を出なくてはならない。

 ベクターは静かに立ち上がり家を出ると、いつもと変わらない道を歩き出す。いつもよりも眩しく感じる春の陽気と温かな風を感じれば、あの日と同じように彼女にまた出逢えるような気がした。

 いや、“出逢えるような気がした”というよりも、そうありたいと、ベクターは願ったのかもしれない。

「○○・・・」

 彼女の名をそっと呟くと、ベクターは雲一つない青い空を見上げた。


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