り善がりな想い

 ○○に気付いたクリスが、息を切らせて走って来る。目の前まで来たクリスの真剣な目を、○○もまた真剣に見つめた。

「隊長、独り善がりな想いを押し付けて、申し訳―」

「言うな・・・“独り善がりな想い”だなんて言わないでくれ」

 クリスは勢いよく頭を下げた○○を強く抱き締めた。そして、○○の首元に顔を埋める。

「お前が独り善がりなら、俺はどうすればいいんだ?いつも○○に毛布を掛けてもらいたいと思い、お前がそうする特別な男が俺であればいいと願っているんだぞ?それを勝手に勘定に入れて、何度も寝たふりをしているんだぞ!?」

「え・・・・・・?」

 ○○が顔を上げたのを察知し、クリスも顔を上げ、まっすぐに○○の目を見つめる。

「いつだって、“隊長として”でも“個人として”でもない!ただ一人の“男として”お前を見ている!・・・傍に居てくれ。毛布を掛けてもらうだけじゃ足りないくらい、○○が必要なんだ」

 クリスは○○の額に張り付いた濡れた前髪に触れながら言った。

「これは俺の独り善がりな想いか?」

「・・・いいえ。誰よりもクリス隊長に近い距離に、私を居させて下さい。その手で・・・抱き締めて下さい・・・隊長が大好きなんです」


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