独り善がりな想い
「あ〜・・・疲れた・・・」
急遽、調べごとがあり、資料室で資料を探していた○○。終業時刻はとっくに過ぎて残業も遅い時間となっていた。ずっと棚から資料を出したり入れたりを繰り返していた肩を、コキコキと回す。
クリス隊長・・・。
どうやっても、昼間の光景が忘れられなかった。いつもなら、仕事に集中しろと自分自身を叱咤できるのに、今日に限ってそれができなかった。きっと、もう何度もあの女性に向いているクリスの笑顔が心の中に焼き付いてしまったのだろう。きっと、あの女性のことが自分は羨ましくてたまらないのだろう。
○○は夜空に輝く星を見上げた。暗い空に明るく輝く無数の星。しかし自分は、輝いてはいないのだろう。しかも、仮に輝いていたとしても、形や名前で識別できるような星とは違う。その他大勢の、広く一般的な“星”でしかないのだ。きっと、クリスから見れば、自分は数多く顔を合わせるうちのただ一人。アルファチームの一員という理由で少しだけ近い距離に居るかもしれないが・・・。何にせよ、クリスに手の届く距離には居られない。
○○は集めた資料をテーブルの上で整えると、静かに部屋の電気を消した。
窓に映った自分の顔が、近くの外灯の明りのせいか酷く歪んでいた。そして、降り出した雨が窓に当たり、映った自分の頬に流れた。
「帰ろう」
○○は資料を抱え、急いで部屋を出た。
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