極めるおっさん
次の日の19時30分―
「ただいま〜」
「こんばんは〜お邪魔しま〜す」
クリスの声と同時に、礼儀正しいピアーズの声が聞こえる。○○はぱたぱたと急いで出迎えた。
「いらっしゃい、ピアーズさ―」
○○がピアーズに近寄った、その時だった。“ピアーズさん”と言い終わらないうちに、ピアーズが両手を広げてにこにこ顔で小走りにやって来た。
「○○さん!はぁ〜い!ピーちゃんですよぉ〜!!」
え゛!!!!
その場で凍りつく○○。更にその視界の奥ではクリスが蠢いたように見えた・・・。
「そして俺が・・・」
ピアーズの隣へ、クリスがスキップでやって来る。
「クリスたんですよぉ〜!!」
うわぁっ!!きんもっ!!!
二人のあまりの気持ち悪さに、○○は腰が抜けてしまった。どうしていいかわからずに、虚ろな瞳をクリスとピアーズの中間にさまよわせる。
すると、先程までの軽い声色と気持ち悪さはどこへやら、ピアーズが真剣な眼差しで手を差し出してきた。
「○○さん・・・」
困ったような表情を作るピアーズ。○○は、ピアーズはわかってくれたのかと、少しだけ安堵の息を吐き出した。
「ピアーズさん・・・」
よかった・・・ピアーズさんは・・・わかってくたんだ・・・そうだよね、こんなバカみたいなことしないよね・・・。
○○は目の前に出された手を掴もうと、自分の手を近付ける。
「全く・・・ずるいな・・・美人の困った顔は、俺は弱いんだ・・・」
「は!?」
いつもよりも恰好つけたようなピアーズの声色だった。
宙で静止する○○の手。
へらへらしている態度から急に真剣になる態度。これは正しくTOWN HUNTERの主人公、才羽リョウではないか。そして“はぁ〜い!ピーちゃんですよぉ〜!!”や“クリスたんですよぉ〜!!”というのも、才羽リョウでしかない。よく考えなくても、才羽リョウはよく自分のことを「リョウちゃんですよぉ〜!!」と言っていた。クリスの言っていた“二人で極める”とは、これのことなのか。
○○の背中を嫌な汗が流れて行く。
「ピアーズ!○○のことなんかいいから!ポーズを決めるぞ!!」
いや!よくないわ!!
目の前で男が二人、声を上げる。
「TOWN!!!!」
ジャケットの中から、上半身に付けたホルスターがちらりと見える。クリスは、そのホルスターからバナナを取り出した。銃を握るようにして、頭上で両手でバナナを構える。
「HUNTER!!!!」
同じく上半身のホルスターからバナナを取り出すピアーズ。準備運動で行う伸脚のような恰好で、銃を構えるようにバナナを構えた。
「・・・ゆっ、夕飯にしましょう!ね!?」
二人をこれ以上直視できない、いや、したくない○○は、バタバタと立ち上がるとリビングへ逃げ込んだ。
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