嬉しいおっさん
「ここ最近、毎日行ってたんだ!!!」
毎日・・・行ってた・・・!?
そんなこと、全く知らなかった○○。
「ゴリラの飼育員が、一か月くらい前かな?妊娠したかもって携帯に連絡くれたんだ!だから嬉しくてな!毎日見に行ってたんだよ!」
さっすが!プラチナ会員!!!プラチナ会員ってそこまでしてもらえるの?―ってか、動物園に「プラチナ会員」とかってあるの!?!?!?
「ピアーズと一緒に見に行ってたんだ!そうしたら、やっぱり妊娠したみたいなんだ!!!」
はぁ!?!?!?ピアーズさんと・・・!?!?!?断りなさいよ!ピアーズさん!何一緒に行っちゃってるの!?!?!?
目を丸くする○○。しかし、「まさか」を確かめるべく、横道に反れた話を元に戻す。
「クリス、仕事は6時までだよね?・・・閉園時間・・・間に合わないんじゃ・・・」
「ああ!だから一時間半早く終わりにした!」
今、彼は何と言っただろうか。『一時間半早く終わりにした』と聞こえた気がするのだが・・・BSAAアルファーチームの、しかも隊長がゴリラを気にしてそんなことをしていいのか。部下と一緒にゴリラを見に行く。しかも、一日だけではない。
「開いた口が塞がらない」状態になってしまった○○。
以前にもバナナの特売で仕事を一時間半早く終わりにしたことがあったので「まさか」と思った○○だったが、その予想は見事に的中。いや、的中と言うよりも、予想を超えて右斜め上に行ってしまった。
「だぁーーーーっ!!何やってんの!!何日もそんなことして!!しかもピアーズさんを巻き込んで!!」
○○は自分の肩にあるクリスの手を払い、勢いよく立ち上がる。
最初にあった重い静寂がいつの間にか消えた今、○○の大きな声が響く。
「別にいいじゃないか!!ピアーズも喜んでたし!かわいいゴリラなんだよな〜これが!!」
クリスは嬉しそうにテーブルの中央にあるバナナに手を伸ばす。
「ゴリラにかわいいとかってあるの!?―って、違う違う違う!!クリス―」
○○がクリスに顔を向ければ、うっとりとした表情で携帯を開き、例の妊娠したゴリラ夫婦の写真を眺める彼。
「あ〜嬉しいな〜」
本当に嬉しそうなクリス。
今の彼を一言で表わすなら、そう!!
「嬉しいおっさん」
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