頑張るおっさん
家の近くのスーパーMikeでいつものように買い物をしていた○○。バナナコーナーでクリスのために、バナナの大量買いをしようとしていた。今日は“熟れすぎたバナナ特売”というのを開催していて、茶色くなった更に甘い香りのするバナナを売っている。○○も試食に茶色いバナナを渡されたところだった。
「ん?」
○○は、スーパーが何だかやたらと騒がしいことに気が付いた。つい先程、携帯にクリスから電話が掛かってきた○○。携帯を耳に当てた状態で、辺りを窺うように見る。
―きゃあああ!みんな逃げてーっ!!
―二人乗りの自転車が突っ込んで来るわーっ!!
騒がしい中から聞こえた悲鳴。○○は眉間に皺を寄せた。
二人乗りの自転車が突っ込んで来るって・・・んな訳な・・・いっ!?
自分の後ろに位置するスーパーの入り口を振り返った○○。
「ピアーズさんっ!?その後ろに・・・えぇっ!?クリスっ!?」
○○の目には、スーパーの入り口にもの凄い速さで迫る、自転車の二人乗りが映った。
ピアーズが自転車を漕ぎ、その後ろにクリスが居る。
だんだんと大きくなるその影。
開くスーパーの自動ドア。そのギリギリの隙間から、もの凄い速さの自転車が、もの凄い形相のピアーズとクリスが、風を切るように入って来た。
「○○さん!その茶色いバナナ、捨てて下さい!!そして!伏せて下さい!!」
勢いをつけて自転車を横にしたピアーズが叫んだ。
「ちょ、ちょっと!いったい何―」
げっ!!!
○○は見た。横にした自転車からクリスがこちらにむかって飛んで来るのを。
茶色いバナナを売る店員の上に、100キロのクリスが落ちる。
「よし!捕まえたぞ!!」
「ビンゴだ!!」
静まり返る中、100キロのムキムキの人間が普通の体格の人間の上に落ちる音と、クリスとピアーズの声だけが響いた。
「ちょっと!いったい何があったの!?」
いつものことながら、こういう風に訊く時は全くといっていい程いいことはない。
○○は怪訝な顔をクリスとピアーズに向けた。
「あぁ!実はな・・・」
クリスのその言葉を聞くなり、○○の顔は「訊かなきゃよかった」に変わる。
良くない・・・サインだわ・・・!
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